Research Abstract |
本年度は,下記の結果を得た. 1)前年度のユーザ調査で得た知見を元に,音声認識方式とテンキー方式のリモコンを試作し,使い勝手の評価実験を2種類実施した.その結果,圧倒的に従来リモコンのタスク達成不可が多かった.また,テンキーが最も時間がかかり,音声が最も速いという結果が得られた.一方,被験者の意見では,テンキーに対する期待が最も高く,ヘルプボタンを支持する声が多かった。 2)オーサリングツール及びツールのユーザを調査した結果,Authoring Tool Accessibility Guidelinesに適合するオーサリングツールが存在するが,知識が豊富でないユーザはその機能を活かしていないこと,ユーザの知識にかかわらず,視覚障害者の利用体験を視覚的にシミュレートするソフトが有効と思われていることがわかった.また,ユーザエージェントを調査した結果,マルチメディアコンテンツの制御などに関する機能を持っていないことがわかった.さらに,コンテンツの構造を利用したナビゲーションができる物とできない物があり,日本ではできないユーザエージェントが普及していることがわかった. 3)早口音声コーパスから話者モデルを構築することによって,早口でも聞き取りやすい合成音声が得られることを確かめるため聴取実験を行い,初期段階で急速に慣れが生じ,その効果は数週間持続し,慣れるに従って個人差がなくなり,早ロコーパスから得た話者モデルの方が慣れにかかわらず高い聴取率をもたらすことがわかった.また,対面朗読者と視覚障害者の対話実験を分析した結果,音訳に固有の技術が有用であること,対面朗読に固有な要素として大局的理解や双方向性などが有効に利用されていることなどが示唆された.さらに,テレビとラジオのスポーツ実況中継を比較分析することで,目に見えない情報を音声化する工夫がわかった. 最終年度は,これらの結果を元に,情報家電とウェブへの音声対話の適用を検討する予定である.
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