Research Abstract |
本研究の目的は,量子論理回路の量子ビット数と回路の段数をうまくバランスさせて削減し,最適な量子論理回路を自動設計するための基礎理論,および,その応用プログラムを開発することである.具体的には,(a)一般のブール関数を計算する量子論理回路の段数やサイズを最小化するための基本原理を確立し,(b)置換や乗算といった個別のブール演算を行う量子回路のサイズや段数の上界や下界の評価を行い,最適な量子論理回路の構造に関する知見を確立する.さらに,(c)それらの知見を応用して,与えられたブール関数を計算する最適な量子論理回路を自動生成するためのコンピュータ・プログラムを開発する.本年度は,特に,以下の研究を行った. 我々はすでに,量子論理回路の深さ最小化問題を明確に定式化し,補助量子ビットを用いずに最適な量子論理回路を構成する方法と,その深さ最小化についての研究を行った.任意の積項を排他的論理和で結合したAND-EXOR論理式をESOP (Exclucive-or Sum Of Product)と呼び,また,論理関数fをESOPで表現したときに積項数が最小になるESOPを論理関数fの最小ESOPと呼ぶが,具体的には,論理関数fの最小ESOPが,f-C-NOT回路と呼ばれる形式のfを計算する回路の,深さ最小の量子論理回路を与えることを示した.しかし,この研究では,補助量子ビットを一切用いずに回路が構成されている.一方,補助量子ビットを用いることで,回路をさらに最小化しようとする試みもある.そこで,これら2つの手法を融合したヒューリスティックな最適化手法の開発を行った. また,置換や乗算のような,量子コンピュータを構成する際に,必須となるであろう基本演算について,最適な量子論理回路を設計した.すでに,我々は,任意の置換を定数深さで行える量子論理回路の設計について検討を始めてきており,ある程度の結果を得ている.そこで,本年度は,その研究成果を応用して,量子乗算回路のさらなる小型化や,パーマネントなどの他の計算を行う量子回路の設計についても研究を進めた.
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