Research Abstract |
建築におけるトラス構造物の最適設計問題や,都市工学における,道路,鉄道などの配置問題および配送問題は,数理的にはユークリッド幾何構造の上での最適化問題として特徴付けられる。また,これらの問題の多くは,実現可能な解集合を考慮すると本質的に離散構造を有する。本研究では,これらの問題を幾何的配置問題としてモデル化し,個々の問題の計算量限界を明らかにするとともに,離散組合せ手法や計算幾何学を用いて実用的に解ける近似アルゴリズムの開発することで近似可能性について解析を行う。今年度は以下の研究を行った。 1.選択可能な節点と部材の集合から安定性を満たす最小の部材と節点を選択し,そこから1つの部材を取り除いてリンク機構を作成する。このような機構を全列挙し,最適な解を求める際のその計算量限界を明らかにした。 2.異なる部材長の数を最小にするトラスの設計問題に関して,境界を正方形グリッドの点を用いて近似する方法を提案し,内部領域の三角形メッシュの良さを定量的に評価した。また,最適な正方形グリッドの配置アルゴリズムも開発した。 3.木構造/格子状ネットワークにおける最適避難計画問題を,動的なネットワークフロー問題として定式化し,木構造ネットワークにおいてシンクが1および2の場合,避難完了時間最小化問題を解く0(n log n)時間アルゴリズムを開発し,さらに,枝容量,枝移動時間が一定の格子状ネットワークにおいて,避難完了時間最小化問題を解く0(n log n)時間アルゴリズムを開発した。 4.平面上に存在する利用者間の交通量が与えられている時,総和が一定の長さの線分集合で表現される道路(鉄道)の配置により増大する利用者の利便性を最大化する交通網の設計問題の計算量限界を明らかにし,いくつかのヒューリスティックの近似性能比も明らかにした。 5.配送問題において,積込み,配送の2種類の荷物を有する場合について,需要原が木構造ネットワークに配置されている場合の,計算量限界と近似性能比に関して研究した。 6.テンセグリティの実現可能性と安定性を,釣合い行列のランクを用いて明確に定義し,節点位置と張力に関する要求を満たす安定な構造を求めるための最適化手法を提案するとともに,その計算量限界を明らかにした。
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