2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16092218
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山下 茂 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教授 (30362833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (40324967)
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Keywords | 量子計算 / 量子封印 / 量子回路設計 / Pure Dephaing / エラー回復 |
Research Abstract |
本研究では、将来の量子計算機の有効な利用のために、様々な状況下での量子計算の能力の解析や利用方法に関して、今年度は主に以下の研究を行った。 1.量子文字列封印における情報流出の上下界に関する研究 量子封印とは、乱数と量子ビットを用いてメッセージを符号化することにより、第三者がそのメッセージを復号すると量子状態が壊れ、メッセージが読まれたことが確認できるというものである。量子文字列封印に関して、今まで盗聴者が盗聴できる情報量と検出率の関係については知られていなかった。そこで、盗聴される情報量の上界が自明な下界に一致するプロトコルを提案し、盗聴者が盗聴できる情報量と検出率のトレードオフの関係を明らかにした。 2.量子回路を二分決定グラフ構造から合成する手法に関する研究 ブール関数を計算する量子回路の組織的な設計手法として、二分決定グラフで量子回路の動作を記述するDecision Diagram for a Matrix Function (DDMF)というデータ構造を利用する手法を提案した。提案手法は、既存の手法が入力数に関して指数的な精度のゲートを必要とするのに比べ、3種類のゲートしか用いないという点でより実用的である。 3.多準位系の量子ゲートによる量子回路設計のためのユニタリ行列近似に関する研究 多準位系の量子ゲートによる量子回路設計のために、与えられた任意のn次元のユニタリ行列を決められたいくつかのn次元のユニタリ行列(基本ゲートに相当)の積で近似する手法を提案した。提案手法は、既存の手法に比べて、合成される回路の規模はほぼ同じままで、アルゴリズムの前段階で要する処理時間を大幅に短縮可能である。 4.Pure Dephasingを考慮した量子オラクル計算モデルに関する研究 量子オラクルがPure Dephasingと呼ばれるエラーを起こしたときに、複数のそのようなオラクルを用いてエラーの影響を低減する手法を考案した。 これらの研究成果を踏まえて、今後更なる研究を進め、量子計算の様々なモデルでの計算能力や利用方法を明らかにすることを目指す。
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