Research Abstract |
本研究計画は,試験管内RNA分子進化法を駆使し,RNA生命体に必要なリボザイムを人工創製することで,生命の起源に迫ることを目標に掲げている。具体的な目標の一つに,脂肪酸生合成に必要な4つの酵素機能をもつリボザイム,すなわち(1)チオラーゼリボザイム,(2)3-ケトアシルCoA還元酵素リボザイム,(3)3-ヒドロキシアシルCoAデヒドラターゼリボザイム,(4)エノイルCoA還元酵素リボザイム,を創製することを計画した。平成17年度末には全てのセレクション戦略を確立した。残念ながら当初確立したセレクション戦略では,平成18年度の研究において望みの活性種がいずれの実験においても濃縮できず,平成19年度はこれらの戦略の見直しを行い,条件を再検討し,戦略を立ち上げ直して,新規活性種のセレクションに挑んだ。戦略見直しの中心になったのは,カウンターセレクションである。これまで,望みの活性種が取れない最大の理由は,想定外の機構で(例えば脱プリン化)によって活性種であるかのような挙動を示すRNAがプールに現れてしまい,望みの活性種を淘汰してしまっていることが,活性種解析から判明した。そこで,望み以外の活性種を除くカウンターセレクションを各セレクションラウンドの間に入れることでそれらを取り除き,望みの活性種のみを濃縮する戦略を立てた。(2)および(3)のセレクションを行った結果,カウンターセレクションの効果で想定外の活性種の濃縮はないものの,望みの活性種の濃縮も観測されなかった。一方で,既に当研究室で取得されているベンジルアルコールの酸化還元リボザイムriboxo2の研究において,その構造の簡略化に成功し,45塩基からなるシンプルなダブルシュードノット構造をもつリボザイムを創製できた。そこで,この活性部位のみをランダム化したプールを作成して,上記のセレクションを現在推進している。
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