Research Abstract |
社会的共通資本の理論的,学説的,制度的,歴史的,文化的側面について総合的な研究を行った. (1)理論的,学説的側面に関して,大気,森林,河川,水,土壌などの自然環境,道路,公共的交通機関,上下水道,電力・ガスなどの社会基盤、教育、医療、司法、金融制度、都市、農村、文化資本などの制度資本からなる社会的共通資本の主要な構成要素について,技術的,経済的,社会的,文化的特質を浮き彫りにするような理論的モデルを構築し,その制度的,政策的含意を明らかにする作業を行った.1960年代から1990年代にかけて展開された動学的最適資本蓄積の理論,内生的経済成長の理論,時間選好の一般理論に加えて,1980年代から現在にかけて展開された社会的共通資本の経済理論を有効に適用し,これらの理論の深化,展開を通じて経済学の動的理論の発展に寄与した.これらの研究成果のうち,Global Warmingに関するものはH.Uzawa, Studies in the Economic Analysis of Global Warmingと題するDiscussion Paperとして配布された. (2)制度的,歴史的,文化的側面に関して,自然環境については,主として地球温暖化の問題について,その理論的研究を深化するとともに,その現実的可能性を検討した.教育,医療については,日本,スウェーデン,米国についての国際比較を中心として研究を進めた.これらの成果の一部は,平成18年5月に開催された慶友国際医療フォーラム2006で発表された.また,『地球温暖化と二十一世紀』(宇沢弘文・細田裕子編),『社会的共通資本としての教育』(宇沢弘文・間宮陽介編),『社会的共通資本としての医療』(宇沢弘文・間宮陽介編)という3冊の共同論文集として東大出版会から刊行される予定である.
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