2007 Fiscal Year Annual Research Report
軟X線発光分光の開発とタンパク質、DNA等の生体物質の電子状態の研究
Project/Area Number |
16104004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 埴 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授 (00162785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 恭孝 独立行政法人理化学研究所播磨研究所, 放射光科学総合研究センター, 専任研究員 (90261122)
原田 慈久 独立行政法人理化学研究所播磨研究所, 放射光科学総合研究センター, 連携研究員 (70333317)
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Keywords | 溶液 / 軟X線吸収 / 軟X線発光 / ミオグロビン / 電子状態 / 配位子場 / クラスター計算 / DNA |
Research Abstract |
(1)新型軟X線発光分光器の高分解能化に向けた対策 新型発光分光器のエネルギー分解能が設計値の半分程度までしか達しないという問題を克服するため,以下に示す4つの対策を行った。 1.振動が従来の1/10に軽減できるターボ分子ポンプへの入れ替え 2.ダンパー機構の導入によるさらなる振動対策 3.温度変化による分光器の歪みを抑えるための恒温ブースの設置 4.分光器調整機構の改良 その結果,分解能は01s領域(550eV)でE/ΔE=1500からE/ΔE=1700程度にまで改善したが,これ以上の改善が見込めないと判断した。最終的に,根本的に分解能が設計値に到達しない要因は回折格子自身の性能(スロープエラー)の問題であることが判明した。 水のスペクトルに現れる微細構造や,ミオグロビンの低エネルギー領域を弾性散乱から分離して観測するには01s領域で0.25eV(E/ΔE=2000),Fe2p領域で03eV(E/ΔE=2400)の分解能が必要であり,現状では不十分で定性的な議論にとどまっているため,回折格子の入れ替えが必要不可欠となった。 (2)鉄貯蔵タンパク質フェリチンの鉄の電子状態観測 同じ鉄タンパク質の中でも,鉄貯蔵タンパク質フェリチンは低エネルギー励起の構造が顕著に見られないため,現行の分解能でも十分解析に耐えるデータが得られる。そこで鉄含有量の異なる2種類のフェリチンを精製し,貯蔵される鉄の電子状態を観測した。高濃度(鉄約1000原子/1ユニット)の試料でのみ有意な信号を取得し,Fe2O3と極めて似通ったスペクトルとなることを見出した。 (3)ミオグロビンの電子状態の理論解析と成果の投稿 4種類のミオグロビンに対して軟X線発光を行い,田辺菅野ダイヤグラムとクラスター計算によって解析を行った。その結果,ミオグロビンの電子状態について,結晶場などのパラメータを得ることができた。その成果は現在投稿中である。 (4)水の電子状態の理論解析と成果の投稿 水に対して軟X線発光を行い,スェーデンと共同研究を行い計算によって解析を行った。その結果,水の電子状態と水素結合について,知見を得ることができた。その成果は現在投稿中である。
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Research Products
(10 results)