2004 Fiscal Year Annual Research Report
環境との関係で冗長となった遺伝子の退化による生物の進化
Project/Area Number |
16107001
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
高畑 尚之 国立大学法人総合研究大学院大学, 副学長 (30124217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
颯田 葉子 国立大学法人総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教授 (20222010)
大田 竜也 国立大学法人総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助手 (30322100)
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Keywords | 遺伝子の退化 / 人類進化 / 分子進化、集団遺伝学 / 環境と生物 / 苦味受容体遺伝子 / マコリン遺伝子の発現調節 / 家禽 / ノトセニア |
Research Abstract |
本研究は、計画調書で記したように「環境との関係で冗長となった遺伝子の退化による生物の進化」という新たらしい視点から、生物とそれを取り巻く環境との関係性をゲノムレベルで明らかにすることを目的とし、4つの研究課題((1)ヒトの個別性に関係した遺伝子の探索、(2)ヒトや霊長類において環境や生殖に密接に関わる遺伝子の研究、(3)家禽特異的発現抑制遺伝子の探索、(4)極限環境への適応)を設定している。初年度は、(2)の課題であるマコリン偽遺伝子による機能遺伝子の発現量調節がマウス特異的であること、ヒトや水棲哺乳類における苦味受容体遺伝子群の際立った退化現象、および霊長類の性染色体遺伝子の進化に関する知見を得た。とくに、苦味受容体遺伝子は霊長類でも重複を起こしてきたが、これらの31の遺伝子のうち約1/3がヒトに至る系統で偽遺伝子として退化した。この結果はGENETICSに掲載されることになっている。また、マコリン遺伝子の転写産物が、特定の転写される偽遺伝子の産物によって安定性を獲得している現象は、マウスのムス属固有のものであることを明らかにした。ヒトにおける調節にも新たな知見を得ているので、現在その報告を取りまとめている。さらに、ヒト特異的偽遺伝子(シアル酸水酸化酵素遺伝子)の集団遺伝学的研究を完了し、その自然選択上の有利さの可能性や現世人類の起源に関する新しい結果を得たので、現在GENETICSに論文を投稿中である。(3)の課題に関しては2Dの予備的な実験を行ったが、そのほかに家禽に保持される大量の遺伝的変異の由来を明らかにするため、多数の核遺伝子の系統学的、集団遺伝学的研究を進めている。また、家禽の起源地とされるタイ北部で野鶏と密接な関係をもつ山岳民族の調査に参加し、日タイ協力して家禽に関する総合研究をはじめた。(4)の課題では、ノトセニア亜目ライギョダマシの脾臓で発現していた免疫系遺伝子についてその構造解析を進め、今後の研究で必要な比較対象種であるノロゲンゲ・カサゴなどの硬骨魚類からのRNA抽出をおえた。次年度はより多くの免疫・代謝関連の遺伝子について対象種のデータも用いノトセニア亜目魚類での適応進化の実態を明らかにする予定である。(1)の課題については、本年は体制を整のえるための準備をおこなった。次年度から本格的に取り組む。
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Research Products
(8 results)