Research Abstract |
有機ヘテロ元素化合物は,医薬品や機能性材料として重要であり,効率的な合成法の開発は有機合成化学の課題である.従来は,多段階を経て調製された様々なヘテロ元素試薬を用いて,有機ハロゲン化合物の置換反応が用いられてきた.従って,毒性のある試薬を用いたり,湿気や酸素を排除する反応条件設定が必要であったり,また,金属ハロゲン化物が副生するなどの問題があった.本研究は,安価なヘテロ元素単体を用いて不飽和化合物への付加反応または飽和化合物のCH置換反応を開発し,経済的で環境調和型のプロセスを創出するものである.遷移金属触媒を用いて研究を進め,新しい有機ヘテロ元素化学分野の開拓を行うものである. ホスホニウム塩の新しい合成法を開発した.従来の合成では有機ハロゲン化合物の三級ホスフィンによる置換反応が用いられていたが,今回,パラジウム触媒を用いてエチレンに付加させてエチルホスホニウム塩を得ることを可能とした.イミド酸を添加することが必須である.また,置換基を有する末端アルケンでは常にanti-Markovnikov付加物を与える, 有機イオウ化合物の反応性に関して,ロジウム触媒を用いたビニルスルフィドとアリルスルフィドと有機ジスルフィド化合物とのアルキルチオ交換反応を検討した.中間に生じていると考えられる有機ロジウムの反応性に関する知見が得られた. チオールとジスルフィドの酸化還元による相互変換反応は有機イオウ化学の基本である.酸化剤と還元剤としてはそれぞれ酸素と水素を用いることができれば経済的であるが,一つの触媒で両方の変換が行える反応は知られていなかった.今回,ロジウム触媒を用いると,酸素雰囲気では酸化反応が進行し,水素雰囲気では還元が起こることを見い出した.
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