2005 Fiscal Year Annual Research Report
人の知覚認知処理機構に基づく音声の時間的側面の数理モデル構築
Project/Area Number |
16200016
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
加藤 宏明 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 主任研究員 (20374093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
匂坂 芳典 早稲田大学, 大学院・国際情報通信研究科, 教授 (70339737)
津崎 実 京都市立芸術大学, 音楽学部, 助教授 (60155356)
山田 玲子 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 人間情報科学研究所, 主幹研究員 (30395090)
田嶋 圭一 法政大学, 文学部, 専任講師 (70366821)
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Keywords | 知覚認知学習 / 音声言語情報処理 / 聴覚 / 時間的側面 / 韻律 / 音声言語習得 / 国際情報交換 / カナダ:タイ |
Research Abstract |
本研究の目的は,音声の韻律要素の中から時間的側面の評価について,人間が内的に行う処理を模擬するモデルを構築することである。平成17年度は,言語に依存しない聴覚の基礎過程を扱う心理物理レベルと言語の違いに依存する処理を扱う言語レベルの2段階でモデル構築を推進した。また,海外共同研究者の一人をタイから招聘して情報交換を行うなど海外との協力体制維持を図った。主要な成果は以下のとおりである。 心理物理レベルでは,予め与えられる知識に基づく音韻セグメンテーションを必要としない知覚的リズム形成のモデル構築に取り組んだ。従来モデル(*)では,母音種類の転換点のようなラウドネス(音の大きさ)の急峻な変化を伴わない部分をリズム参照点としてとらえていなかったが,人の音声処理においてはそのような部分もリズム形成の手がかりとして利用され得る。そこで,聴覚末梢における周波数分析機能を模擬し,その出力を利用することにより周波数帯域毎のレベル変化に基づく事象検出機能を実現し,新モデルに適用した。実音声を用いたシミュレーションの結果,従来法では検出できなかった母音種類の転換点のような参照点候補の自動抽出が可能であることが分かった。 言語レベルでは,時間長変動により辞書的意味が変わる日本語特殊拍の非母語話者による知覚の特性とその訓練による変化を調査した。訓練により非母語話者の知覚特性は母語話者に近づくこと,一種類の特殊拍(長音)の訓練でも他種類の特殊拍の聞きとり(促音,撥音)に効果が般化することなどが明らかになった。なお,訓練と並行して訓練前後の脳活動の様子をfMRIにより観測した。次に,音声の時間構造と他の韻律要素である高さ(F0)との相互作用の検討では,発話内容の語に内在する意味に応じてF0の時間変化パターンを継続時間長と組み合わせて制御することにより,話者の発話意図を精度良く再現できることが分かった。 *加藤他(1999).日本音響学会誌55,752-760.
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Research Products
(21 results)