2006 Fiscal Year Annual Research Report
生物学的リン除去法におけるリン蓄積細菌群集の生態の解明とその工学的応用
Project/Area Number |
16201016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
味埜 俊 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60166098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教授 (90251347)
小貫 元治 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任講師 (20376594)
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Keywords | 活性汚泥 / 嫌気好気法 / 生物学的リン除去 / ポリリン酸蓄積細菌 / 基質代謝特性 / FISH-MAR / 16S rDNA / Candidatus "Accumulibacter Phosphatis" |
Research Abstract |
本年度は代表的なポリリン酸蓄積細菌(PAO)であるAccumulibacter phosphatisと代表的なその競合細菌(GAO)であるCompetibacter phosphatisとの競合関係を調べるために、MAR-FISH法を定量的に行うことを試みた。まずは、純菌(Escherichia coliおよびRalstonia eutropha)を用いて、それぞれ二段階の量の放射性炭素を摂取させた。その結果、種が異なる場合には、摂取された放射性炭素の量とMARにおいて生成される銀顆粒の面積は必ずしも比例関係にはないが、同一の細菌であれば比例関係が見られることがわかった。この結果に基づき、さまざまなpH条件下で活性汚泥に酢酸を摂取させたときに、A. phosphatisとC. phosphatisの摂取する酢酸の量の関係をMAR-FISH法により比較することができると判断できた。 試験は3度行った。一度目は、A. phosphatisはpH6-8の間では酢酸摂取はほぼ一定であり、9ではやや落ちた。二度目では、pHが上昇するに従って徐々に酢酸の摂取が減少するとの結果が得られた。一方、C. phosphatisは一度目の実験ではpH6から8に上昇する間に酢酸摂取が半分程度に減ったが、二度目の実験では有意な影響は認められなかった。近年、低pHはGAOに有利でありリン除去の悪化につながりやすいとの報告もなされているが、ここでは、pHの影響はそれほど明確ではないとの結果になった。また、実験室内で異なるpHで嫌気好気式活性汚泥法を運転したところ、pH6.5でもある程度の期間リン除去を維持できた。pHだけではPAOとGAOの競合関係を説明するのは難しいとの結果となった。 昨年度までの結果とあわせ、PAOは多種多様な種を含んでおり、A. phosphatisは割合としては多いがその中の一種に過ぎないことがわかった。また、PAOとGAOの競合関係について、MAR-FISH法を導入して検討したが、基質の嗜好も似ており、pHが競合に及ぼす影響も海外の研究者により報告されているほど明確でないことがわかった。pHや基質の様な外部から与えられる因子ではなく、汚泥そのものの中に存在する因子に着目していく必要があると考えられる。
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