2006 Fiscal Year Annual Research Report
ALMA時代を見据えた分子原子輝線輻射輸送計算による数値天文学の構築
Project/Area Number |
16204012
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
観山 正見 National Astronomical Observatory of Japan, 台長 (00166191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富阪 幸治 国立天文台, 理論研究部, 教授 (70183879)
長谷川 哲夫 国立天文台, 電波研究部, 教授 (50134630)
和田 桂一 国立天文台, 理論研究部, 助教授 (30261358)
河野 孝太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80321587)
大向 一行 国立天文台, 理論研究部, 上級研究員 (70390622)
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Keywords | 数値計算 / 輻射輸送 / 星間ガス / 活動銀河核 |
Research Abstract |
宇宙で生起するさまざまな現象に関しては、いくつかの理論モデルがあるものの、それが観測的には十分に実証されているとはいえないものが多い。本研究課題では現在建設中のアルマ望遠鏡を始めとする次世代観測機器により、これらの理論モデルを実証することを目的としている。具体的には以下のものを考察した。 (1)最も若い段階の原始星であるファーストコア天体は、星のその後の進化を考える上で、きわめて重要であるが、観測的にはまだ見出されていない。そこで、将来の発見の手がかりとするため、1次元および3次元流体計算モデルを用いて、それに対して輻射輸送計算を行うことにより、観測的性質を調べた。その結果、原始星表面からのショックが直接見える場合には、中間赤外域に輻射のピークが現れるのに対し、エンベロープを通してみた場合にはサブミリ波として観測されることが分かった。またその光度の値の進化も計算した。(2)星間媒質は、星間ガスの熱不安定性により、暖相と寒相の二相から成り立っていると考えられている。またこの二相気体としての性質が、星間に普遍的に観測されている乱流の原因である可能性もある。この可能性を検討するため、もしこれらの2つの相が非常に稠密に混合しており、空間分解できない場合に、COなどのライン比に特徴的な傾向が見られないか調べた。その結果、寒暖二相の境界領域の影響により、通常よりも高励起状態からの輝線放射が卓越することが見出された。(3)活動銀河核(AGN)周囲のトーラス状分子ガスは、銀河中心の強い活動性を診断する実験場と捉えることができる。銀河中心からの高エネルギー輻射(X線や紫外線)は分子トーラスの化学組成に強く影響を与え、局所的にX線/紫外線支配領域(XDR/PDR)を形成する。化学組成は分子輝線強度比に反映されるので、ミリ波・サブミリ波分子輝線比の測定から銀河中心部の活動性を診断する手法が提案されてきた。そこで、我々は分子トーラスでのHCN・HCO$^{+}$回転遷移輝線の3次元非局所的熱平衡輻射輸送計算を行い、分子トーラス内部の非一様ガス分布を反映しHCN・HCO$^{+}$輝線強度分布も著しい非一様性を示すことを見出した。このように複雑な構造を持つ分子トーラスでは、分子輝線強度比は1)分子トーラスの熱的構造を反映した励起状態分布、2)銀河中心部の活動性を反映した化学組成分布、の組み合わせで決定されることが分かった。平成19年10月16日〜10月17日箱根において、海外からの研究者2名を含む研究会「Radiative Transfer mini-workshop」を行い、銀河・星形成領域の輻射輸送の数値解析についての発表・議論を行った。平成20年2月12日〜2月14日北海道大学にて「輻射輸送研究会」を開催し、研究成果に関する発表・議論を行った。
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Research Products
(6 results)