2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16205002
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 健一郎 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授 (90106162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関谷 徹司 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30259981)
和田 真一 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60304391)
高橋 修 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (60253051)
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Keywords | 軟X線放射光 / 内殻電子励起 / オージェ崩壊過程 / 光刺激イオン脱離 / サイト選択的反応 / 角度分解イオン検出 / 自己組織化単分子膜 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
本研究では、これまでに開発してきた各種の分光学的手法を基礎にして、新たにイオンの放出方向と並進エネルギーを測定できる新しい実験手法を開発し、多様な高配向性表面分子系において精度の高い実験と理論計算を使用した内殻励起イオン脱離反応のダイナミックスの全貌解明を目指している。最終年度となる本年度は、この研究目的に沿った研究を実施し、以下の成果を得た。 1.内殻電子励起により表面分子系から飛び出すイオンの放出角度は、この反応機構を反映しており、サイト選択的な直接反応機構で脱離するイオンのみが強い偏光依存性を示すことが判明し、この興味深い化学反応機構の解明に向けた重要な知見を得た。 2.結晶性に優れた金属清浄表面に官能基を高配向で配列する様々な自己組織化単分子膜を作成し、内殻励起イオン脱離反応を調べた。その結果、サイト選択的性は、単分子膜を構成する主鎖の長さや種類に強く依存することが判明した。短い主鎖や芳香族環で構成された主鎖をもつ単分子膜では、予測通り、サイト選択性は増加するが、金属基板との相互作用の増大による反応の失活過程により反応効率そのものが低下することが判明し、主鎖の長さや種類を変化させることにより選択的イオン脱離反応を効率よく引き起こす反応系の探索のための重要な指針を得た。 3.内殻共鳴励起状態の動力学を密度汎関数法により理論的に調べた。その結果、サイト選択的結合切断反応に重要な役割を果たす共鳴励起状態での反発ポテンシャルの傾きと化学結合との系統的な関係を理論的に見出すことに成功した。着目した化学結合間の原子番号の和が大きいほど強い反発を示すこと、原子番号の大きい原子を励起した方がより強い反発を示すこと、結合長が短いほど強い反発を示すことなどの一般的な規則性の発見は、サイト選択的結合切断を予測する重要な指標となり、反応設計を行なう上で有用な知見である。
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Research Products
(21 results)