2006 Fiscal Year Annual Research Report
高周期典型元素開殻分子の合成、構造及び機能開発に関する研究
Project/Area Number |
16205008
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 章 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (90143164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一戸 雅聡 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (90271858)
中本 真晃 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (90334044)
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Keywords | 高周期典型元素 / 開殻分子 / ラジカル / 電子移動反応 / 電子状態 |
Research Abstract |
炭素をはじめとする第2周期元素の多重結合化合物と比較して、高周期典型元素の多重結合化合物は軌道準位の高いπ軌道(最高占有軌道)、低いπ*軌道(最低非占有軌道)を持ち、容易に酸化還元を起こすことが出来る。我々はこれまでに、ケイ素=ケイ素二重結合化合物の酸化・還元により対応するイオンラジカルの合成、単離に成功し、その分子構造、電子状態を明らかにしてきた。本研究では、我々が初めて安定な化合物として合成、単離することに成功したケイ素-ケイ素三重結合化合物(ジシリン)の還元によるアニオンラジカル種及び関連化合物の構造及び電子状態について検討した。 ジシリンは、テトラヒドロフラン等の配位性溶媒中、種々のアルカリ金属類で還元され対応するアニオンラジカル種を対カチオンとの相互作用のない溶媒和分離イオン対として与えた。また、還元力の強いナトリウム、カリウムでは芳香族炭化水素溶媒中でも還元反応が進行し、アルカリ金属イオンが一方のspケイ素に相互作用した接触イオン対としてアニオンラジカルを与え、両者の構造は単結晶X線結晶構造解析で決定した。いずれも中性ジシレン同様、トランス折れ曲がり構造を持ち、骨格のケイ素-ケイ素結合長は三重結合長と二重結合化合物の中間的な長さを示すと共に、折れ曲がり角が縮小することが分かった。ジシリンはトランス折れ曲がり構造を持つことに起因して縮退の解けた二つのπ*軌道を持ち、そのアニオンラジカルでは、軌道準位の低い分子面内非対称π*軌道に1電子を収容するため、その分子軌道を反映した構造化学的摂動を受けることを明らかにした。 また、ベンゼン環を連結子として中性ケイ素ラジカル中心を同一分子に組み込んだポリラジカル種の発生を検討し、そのスピン状態に関する検討も行った。
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Research Products
(5 results)