2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16205013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 民生 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (00093295)
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Keywords | キラルジエン配位子 / 触媒的不斉合成 / 共役付加 / 不斉アリール化 / ロジウム触媒 / 有機ホウ素試薬 / 有機亜鉛試薬 |
Research Abstract |
触媒的不斉合成の研究を行うとき不斉配位子の設計・合成が重要課題となる.後周期遷移金属錯体を触媒とする不斉反応には,リン原子や窒素原子を金属への配位点とするものが数多く考案され用いられてきた.軸不斉ビナフチル骨格をもっbinapに代表されるキラルビスボスフィンやホスファイトなどをはじめとしてオキサゾリン骨格を含む窒素配位子など毎年50例以上の不斉配位子が報告され続けている.中にはこれまでの配位子とは異なるユニークな構造をもち新しい機能を示すものもあるが,大部分は従来の不斉配位子の延長上にあり,新規性に乏しい.本研究では全く前例のない新規な不斉配位子としてキラルな構造をもつジエンを初めて合成し,これがロジウム触媒不斉1,4-付加反応をはじめとするいくつかのロジウム触媒不斉反応の良好な不斉配位子となることを見出した.すなわちキラルジエン配位子の使用により,従来の,たとえばbinapのような,不斉ビスホスフィン配位子を用いた場合と比べて立体選択性だけでなく触媒活性も高くなることが明らかになった.反応によっては触媒量を0.01mol%以下にまで低減することにも成功した. 平成18年度には,ジエンを配位子とするロジウム錯体の触媒活性がなぜ他のロジウム錯体より触媒活性が高いかを解明することに重点を置いた.共役エノンへのアリールボロン酸の付加反応をReaction Calorimetryを用いて追跡・解析することにより,ジエン配位子は触媒サイクルの中のトランスメタレーションの段階を加速することが判明した.また同時にあまり前例のないnegative nonlinear effectなども観測することができた.このようにキラルジエン配位子は触媒的不斉合成分野に新しい研究領域を切り開くものである.
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