Research Abstract |
昨年度までは,ヒトエンブリオ標本のMR画像の空間分解能の向上をめざして開発を行ってきたが,今年度は,画像コントラストの最適化をめざして研究を行った.このために,まず,画像コントラストの基礎となる,試料の中のプロトン(水素原子核)のNMRパラメタ(縦緩和時間T1,横緩和時間T2,プロトン密度,拡散係数)などを,定量的に計測する手法の開発を行った. 本研究において,NMRパラメタは,三次元で計測を行っているが,三次元計測を行う際に受信系のダイナミックレンジ(計測系における検出できる最大の信号と最小の信号の比)が不足する問題を,まずは,Dual Scanという手法で解決した.そして,この手法を用いて,緩和時間の計測をファントムと標準的エンブリオ標本で実施した.エンブリオ標本では,T1とT2,そして,T2と拡散係数に関して比較的高い正の相関が得られたが,ファントムでは,一定であるべきT1とT2に,かなりのばらつきが見られた.このため,計測の再現性を検証したところ,計測時間中に,送信系と受信系のゲインが時間的にかなり変化していることが判明した.このため,緩和時間計測シーケンスの前後にレファレンススキャンを行いながら,信号強度を補正する方法を試みた.また,二次元画像に対する緩和時間の再現性評価も行った.これらの結果,三次元で緩和時間分布を求めることは,かなり難しく,二次元で緩和時間分布を求めることとした.今後は,ヒト胚子標本の正中断面における緩和時間分布を計測するために,オブリーク断層面におけるスキャンを試みる予定である.
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