2006 Fiscal Year Annual Research Report
製造プロセスで発生する汚れの付着および脱離の分子機構と洗浄操作の高効率化
Project/Area Number |
16206076
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中西 一弘 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (90026584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 維克 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (70294436)
今中 洋行 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (10379711)
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Keywords | 付着機構 / タンパク質 / 吸着等温線 / β-ラクトグロブリン / 脱離速度 / 過酸化水素電気分解洗浄 / ペプチド / ポリスチレン |
Research Abstract |
本年度は、タンパク質の固体表面への付着と表面からの脱離(洗浄)速度に関して下記の4点について検討した。 1.金属(チタン及びステンレス)表面へのタンパク質の付着機構を明らかにするために、特に、表面と直接相互作用するペプチド部位について詳細に検討した。乳製品の加熱殺菌における主たる汚れ成分であるβ-ラクトグロブリン(β-Lg)をモデル汚れ物質として用いた。まず、ステンレス表面に不可逆的に付着したβ-Lgにリジルエンドプロテアーゼを作用させ、プロテアーゼ消化により生成するペプチド郡の挙動を、溶液中のβ-Lgに作用させた場合の結果と比較した。その結果、ステンレス粒子に付着したβ-Lgからは、複数の酸性アミノ酸残基を含む102-135残基から構成されるペプチド断片の生成は殆どみられなかったことから、この部分がステンレス表面と直接相互作用していることが示唆され、以前に報告した結果(Sakiyama et al., J.Biosci.Bioeng., 88,536-541(1999))と一致した。 2.上記1.の結果などに基づいて、酸性アミノ酸及び塩基性アミノ酸などからなるオクタペプチドの金属固体表面への吸着挙動について実験的ならびに理論的検討を行った。アスパラギン酸、リジン及びアラニンが種々の比率で構成されるペプチドの吸着平衡関係及び不可逆的吸着量を測定した。中性pHよりも酸性側では、酸性アミノ酸が表面と直接、強い相互作用を示し、塩基性アミノ酸は、表面から反対の溶液側に向いた、いわば分極した状態で付着することが明らかにされた。このような現象は、ペプチドの構造柔軟性に起因するものであり、付着によるタンパク質の変性の原因の一つになることが示唆された。 3.ステンレス表面に付着したβ-Lgの、過酸化水素電気分解洗浄による脱離速度に及ぼす様々な共存塩類の影響について実験的検討を行った。特に、リン酸カリウム存在下では、速度が著しく増加することが示された。 4.プラスチックへのタンパク質の付着機構を、タンパク質-タンパク質相互作用解析という観点から検討したが、疎水性ポリスチレン表面上では、酵素活性ほぼ完全に失われることを示した。
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