2006 Fiscal Year Annual Research Report
海洋環境への適応をつかさどる遺伝子の探索:浸透圧調節ホルモン遺伝子
Project/Area Number |
16207004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹井 祥郎 東京大学, 海洋研究所, 教授 (10129249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兵藤 晋 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (40222244)
井上 広滋 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (60323630)
宮野 悟 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50128104)
坂内 英夫 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 講師 (20323644)
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Keywords | ナトリウム利尿ペプチド / ANP / BNP / グアリニン / 体液調節 / 海水適応 / ウナギ / 鯨類 |
Research Abstract |
平成18年度において、次の3つのテーマにおいて大きな進展があった。 (1)鯨類におけるナトリウム利尿ペプチドの作用 水生生物は重力の影響から免れるため、独特な循環調節をおこなっている可能性が高い。そこで、3種のイルカにおいて心房性およびB型ナトリウム利尿ペプチド(ANP, BNP)を同定してその測定系を確立し、水族館で訓練したバンドウイルカを用いて水中と上陸した際のこれらの血中ホルモンレベルの変動を調べたところ、その濃度に差はなかった。人の場合は水につかると心臓が膨れてナトリウム利尿ペプチドが分泌されるが、水中生活に適応したイルカを上陸させると心臓が圧迫されるため心拍数が上昇してANPが分泌され、そのため差がなくなるのだろうと予想される。 (2)ウナギにおけるANPの飲水抑制作用の作用部位 海水に適応したウナギの血液中にANPを投与すると、飲水が強力に抑制され血漿ナトリウム濃度が減少する。脳室にANPを投与しても飲水が抑制されるため、ANPの作用部位は脳であることがわかる。そこで、脳血液関門が未発達な脳室周囲器官である最後野(AP)を電気的に、およびカイニン酸により破壊したところ、飲水抑制作用が消失した。したがって、血液中のANPは延髄にあるAPにお作用して飲水を抑制していることがわかった。 (3)グアニリンの海水適応促進作用 腸のホルモンであるグアニリンは、腸の管腔側に分泌されて上皮細胞の管腔側の膜にあるクロライドチャネルを活性化してナトリウムを分泌させる。その結果、Na-K-2Cl共輸送体が活性化されて水の吸収が促進される。このように、グアニリンは哺乳類ではClを管腔に排出させることにより下痢を起こさせるホルモンであるが、魚類では2分子のClを排出することにより4分子のイオン(Na, K, 2Cl)を吸収するためそれにともない水が吸収され、その結果海水適応が促進されることがわかった。
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Research Products
(27 results)