2005 Fiscal Year Annual Research Report
亜高山帯における気象特性・山岳霧の発生メカニズムの解明と森林生態系へのインパクト
Project/Area Number |
16208016
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
太田 岳史 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (20152142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 千里 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (40240808)
服部 重昭 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 教授 (30273212)
田中 隆文 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40192174)
檜山 哲哉 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教授 (30283451)
井良沢 道也 岩手大学, 農学部, 助教授 (40343024)
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Keywords | 高山帯 / 放射霧 / 上昇霧 / 安定同位体比 / 局地風 / 森林への結露 / 霧水の化学組成 |
Research Abstract |
1.山岳霧の発生メカニズムに関する考察:高山市街から乗鞍岳山頂直下にわたって地上気象観測を行うとともに,ゾンデによる高層気象観測,水蒸気サンプリングによる安定同位対比観測を集中的に行った.その結果,以下のことが示された.1)盆地底部に発生する放射霧は秋季に,山頂部に発生する上昇霧は夏期には発生頻度が高くなった.2)放射霧発生日は非発生日よりも比湿が低くなった.水蒸気量の減少により夜間の長波放射による冷却が一層加速され,水蒸気は大気中には少ないにも関わらず放射霧が頻繁に発生する事が考えられた.水蒸気量の減少による下向き長波放射量の減少は,約20Wm-2に達すると推定された.3)上昇霧の発生日には,比湿の日較差が非発生日より大きくなり,特に上層での増加が顕著となった.また,上昇霧発生日には顕著な局地風の存在が風速,風向の解析から認められ,盆地内で活発な大気輸送が行われていることが示唆された.4)安定同位対比の観測により,上層と下層の大気での安定同位体比に相反する日内変動がみられ,上層と下層の大気の性質が類似する時間帯と明らかに異なる時間帯が存在することが示された.これは,上下層大気の混合を示唆する結果であり,今後,放射霧,上昇霧発生時の気象状態と同位体比の日変動を総合的に解析することにより,霧水の水蒸気源を考察する事が可能になると判断された. 2.霧の化学成分分析:乗鞍岳山頂直下で10/2-5の3日間集中霧水サンプリングを行った.連続した3日間であるが,化学組成が大きく変動していた.これは,霧のソースとなる水蒸気の移動と化学成分の変化の関連があることを示唆する 3.森林生態系の濡れ時間に関する考察:岐阜県内のスギ林において,濡れセンサにより森林が結露によって濡れた状態におかれる期間の計測を行った.その結果,樹冠上部付近では結露が,月平均で5日〜7日発生し,その濡れ継続時間は平均約8時間,濡れ開始時刻は21時頃から朝方の4時くらいに集中し,日出後4時間ほどで乾くことがわかった. 4.森林生態系の構造計測手法の開発:広大な空間的広がりを持ちマルチスケールな階層構造を成す林冠について、部分的なサンプリング測定から全体の性質を推定するための、林冠3次元構造を適切に表現できるシミュレーション手法を開発した。
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Research Products
(1 results)