2006 Fiscal Year Annual Research Report
プリオン病における赤芽球系造血細胞の分子病態:生前分子診断のための分子基盤確立
Project/Area Number |
16208030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲葉 睦 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (00183179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 基広 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (30219216)
稲波 修 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (10193559)
梅村 孝司 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (00151936)
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Keywords | プリオン病 / 分子診断 / 造血前駆細胞 / AHSP / サイトカイン / 転写制御 / 人獣共通感染症 / 牛 |
Research Abstract |
1.マウスにPrP^<Sc>を脳内接種し、経時的に血液、骨髄、脾臓、肝臓、脳を採取、AHSP mRNA、AHSP、インターロイキン(IL)-1,-6の定量解析を行い、正常マウスと比較した。脳内接種後150日までにほとんどの個体が神経症状や消耗性疾患病態を呈し、PrP^<Sc>の脳内蓄積が認められた。一方、骨髄等におけるAHSP mRNA量、AHSPタンパク質量には徴候と関連した明瞭な変動が認められなかった。 2.前年度に、MELhide8細胞を用いてAHSPの転写にはGATA-1が基本転写因子として働くこと、AHSPやグロビンの転写制御にIL-6が影響することを明らかにした。本年度は、これを踏まえ、赤芽球系分化誘導時のMELhide8細胞での転写制御に関わるサイトカインの作用の特異性、関わる細胞内因子と情報伝達経路の解析を行った。MELhide8細胞におけるAHSP mRNA含量はIL-6存在下に有意に低下し、IL-1ではその作用は弱く有意差は認められなかった。また、他のサイトカインはほとんど影響を示さなかった。IL-6による影響は、抗IL-6中和抗体存在下に抑制された。さらにAHSPプロモーター/レポーター発現系での解析から、IL-6の作用はAHSPプロモーター/GATA-1相互作用による転写活性化に対するものであることが示された。即ち、PrP^<Sc>は炎症性サイトカインの作用を介してAHSP転写抑制を生じると考えられた。 3.北海道立畜産試験場の協力を得てPrP^<Sc>脳内接種後1-2年の前発症状態における牛の末梢血中(赤血球、白血球)AHSPを定量解析した。その結果、対照個体との間に明確な差異は認められなかった。 これらの成果は、プリオン病個体ではサイトカイン産生を介したAHSP転写抑制が生じるが、それは末梢血のAHSP濃度に反映されるものではなく、これを利用した間接的診断法が困難であることを示している。しかし、同時にサイトカインが転写制御により貧血病態を生じ得るという新しい知見を提唱するものである。
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Research Products
(6 results)