2005 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスの分子機構とその制御異常に関する遺伝医学研究
Project/Area Number |
16209011
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中尾 光善 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (00217663)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 裕之 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (30183825)
|
Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 発生・分化 / DNAメチル化 / DNAメチル化酵素 / メチル化DNA結合蛋白質 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本研究では、エピジェネティクスのシステム分子の生理機能と制御機構、関連する遺伝現象と異常症について解明することを目的とした。 平成16年度に報告したメチル化酵素DNMT3A、DNMT3Bの条件的ノックアウトマウスを用いて、配偶子形成とゲノムインプリンティングの確立機構について詳細な解析を行ったほか、それらの制御因子であるDNMT3Lが減数分裂等に及ぼす影響を詳しく報告した。また、ICF症候群患者で見られるDNMT3B変異のうちのいくつかはDNMT3BとDNMT3Lとの相互作用を減弱させることを見出し、DNMT3Bに変異の見られないICF症候群の原因について、DNMT3Lまたは関連した因子が関わる可能性を示した。 メチル化DNA結合タンパク質MBD1は、癌抑制遺伝子や組織特異的な遺伝子のDNAメチル化に依存的な転写抑制、ゲノム安定性に関わっている。その転写抑制ドメインに結合するMCAF1が、ヒストンH3の9番目リジンのメチル化酵素SETDB1と相互作用すること、メチル化DNA領域でMBD1-MCAF1-SETDB1複合体がHP1依存性のヘテロクロマチン形成と転写抑制を行うことを報告した。また、MCAF1と相同性のある新規分子MCAF2を見出した。RNA干渉法を用いて、MCAF1がヘテロクロマチン形成に必要であることを示した。さらに、ピストンH3の27番目リジンのメチル化に作用するポリコーム複合体とMBD1が協働することも見出しており、DNAメチル化とヒストンメチル化の使い分けによる遺伝子抑制機構を明らかにしつつある。ゲノム上のドメイン間の境界配列(インスレーター)は、インスレーター結合タンパク質CTCFで認識されている。その結合因子候補を酵母2ハイブリド法で同定し、インスレーター機能や遺伝子発現との関連性を遺伝学的に検討した。また、SUMOによる蛋白質の翻訳後修飾がクロマチン形成に関わることを見出した。 以上、DNAメチル化酵素とメチル化DNA結合タンパク質の生理機能と異常症の発生機序、エピジェネティクスシステムについて新たな発見があり、エピジェネティクスの全容解明に対する大きな進展があった。
|
Research Products
(19 results)