Research Abstract |
本年度は前年度に引き続き,開発した呼気ガス質量分析システムを用いて,成人ボランティアを対象に生体微量ガス成分の調査を行った.これらの被験者には健康人の他,呼吸器疾患,循環器疾患,内分泌代謝疾患や消化器疾患などの種々の患者が含まれていた.健康調査票(性,年齢,服用薬剤,食事,居住環境,喫煙,生活習慣等),General Health Questionnaire等の質問紙調査や種々の臨床検査情報を得た上で,安静座位における呼気ガス質量分析を行った.呼気と皮膚ガスに代表される生体ガスを診断目的で分析する際には内因性代謝産物のみならず喫煙や大気汚染,薬剤,食事摂取などの種々の外因性化合物を念頭に置かなければならない.本年度は特に呼気・皮膚ガスにおける低分子ガススペクトラムから喫煙者における生体微量ガス成分の特徴を検討した.解析の対象とした成人ボランティアは957名で,このうち喫煙者は166名(17%)であった.被験者は早朝空腹下で手洗い・歯磨きの後,安静座位の状態でマウスピースを介した高純度人工空気の呼吸下で,呼気・皮膚ガスの酸素(O2),二酸化炭素(CO2),水素(H2),メタン(CH4),一酸化炭素(CO),一酸化窒素(NO),窒素酸化物(NOX)濃度を測定した.O2とCO2は電気化学センサーで,H2,CH4,COはガスクロマトグラフ半導体検知法,NOとNOXは化学発光法により測定した.換気量は熱線流量計で計測し,各成分の分時排気量を算出した.早朝空腹の条件下において,喫煙者では喫煙本数に依存して呼気NOの減少と呼気COの増加が認められた.他方,呼気中のO2,CO2,H2,CH4,NO2(【approximately equal】NOX-NO)ならびに皮膚ガス中のH2,CH4,COには有意に影響しないことが明らかとなった.
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