Research Abstract |
本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,次の3点を柱としている.1.遺伝性神経疾患の遺伝子診断をDNA microarrayを用いてハイスループットで行うシステムの構築,2.疾患関連遺伝子の体系的解析による孤発性神経疾患へのアプローチ,3.神経疾患の患者毎の臨床表現型の多様性の背景を探索する.この目的を効率よく達成する方法として,これまでに4つのDNA microarrayを制作した.具体的には,筋萎縮性側索硬化症を主な対象疾患としたTKYALS01,パーキンソン病を主な対象疾患としたTKYPD01,TKYPD02,アルツハイマー病を主な対象疾患としたTKYAD01であるこれらの疾患に加えて,家族性痙性対麻痺,副腎白質ジストロフィーなどの遺伝子もこれらのmicroarrayに含めた.これまでに,筋萎縮性側索硬化症,家族性痙性対麻痺,常染色体優性遺伝性パーキンソン病,副腎白質ジストロフィーを対象とした網羅的DNA resequencingを実施した.家族性痙性対麻痺については,40例の痙性対麻痺症例についての網羅的解析を行い,spastin変異が30%に見られること,孤発性と考えられた症例においてもspastin変異が存在しうることを証明した.spastin変異を有する例は10歳前に発症する早期発症例の群と,30歳以降で発症する遅発例群の2群に分かれることを示した.筋萎縮性側索硬化症については,dynactin遺伝子に新たな変異を見出した.パーキンソン病については,LRRK2遺伝子の新たな変異例を見出し,大規模解析を進めている.副腎白質ジストロフィーについては,新に6例で変異を確定した.
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