2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子メカニズムに基づく遺伝性難聴の病態マウスモデルの開発と根本的治療への新展開
Project/Area Number |
16209050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
池田 勝久 順天堂大学, 医学部, 教授 (70159614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美野輪 治 理化学研究所, ゲノム科学総合研究センター, 主任研究員 (00181967)
芳川 洋 順天堂大学, 医学部, 教授 (50133327)
榎本 冬樹 順天堂大学, 医学部, 講師 (00281361)
福島 邦博 岡山大学, 医学部, 講師 (50284112)
横井 秀格 順天堂大学, 医学部, 講師 (80317487)
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Keywords | GJB2遺伝子 / 先天性難聴 / 聴性納幹反応 / 動物モデル / コルチ器 |
Research Abstract |
難聴遺伝子の発見によって、これまで原因不明であった難聴の本質的な病因が明らかとなったが、発症機序の解明や根本的治療の確立にはヒトでは限界があり、遺伝性難聴の病態モデル動物の開発が必須と考えられている。 GJB2遺伝子変異によって生じる遺伝性難聴モデル動物として、優性阻害効果による優性遺伝マウスと条件付きノックアウトによる劣性遺伝マウスを紹介する。優性的阻害効果を持つ遺伝子変異を導入したトランスジェニックマウスの内耳には変異gjb2 mRNAが正常gjb2 mRNAの3〜4倍発現していた。聴性脳幹反応(ABR)の測定を行うと、トランスジェニックアリル非発現マウスはいずれも35dB以下の閾値であるのに対し、トランスジェニックアリル発現マウスでは閾値が90dB以上に上昇していることが判った。組織学的検討では生後2週においてコルチ器の変性が、生後7週においてコルチ器の変性とラセン神経節の細胞密度低下を認めた。透過型電子顕微鏡では、コルチ器では、内外有毛細胞の変性が明らかで、支持細胞、特に柱細胞の変形によるコルチトンネルの消失が特徴的だった。それに対して、蝸牛外側壁のラセン靭帯の線維細胞、血管条には異常を認めなかった。 条件付きノックアウト手法によるgjb2欠失マウスの蝸牛にはCx26蛋白の発現は低下しており、ABRの閾値は100dB前後と高度の難聴を示した。形態学的にはコルチ器の構造が虚脱しており、支持細胞や有毛細胞の変形を認めた。生後9日以降の発達段階での検討では、欠失マウスの蝸牛は機能ならびに形態学的に成熟していないことが判明し、Cx26がマウスの蝸牛の熟成晩期に貢献していることが示唆された。 以上の結果は、gjb2遺伝子の変異によって(1)Cx26変異タンパク質が新たに難聴を引き起こしたり、(2)正常Cx26の低下や消失が難聴を惹起することを示している。
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Research Products
(3 results)