2006 Fiscal Year Annual Research Report
豪州Moreton湾における毒素生産シアノバクテリアの増殖メカニズムの解明
Project/Area Number |
16254001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大村 達夫 東北大学, 大学院工学研究科, 教授 (30111248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 徹 東北大学, 大学院工学研究科, 助手 (10302192)
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Keywords | L.majuscula / スーパーオキシド / 第一鉄(Fe(II)) / フミン鉄 / 鉄摂取経路 / フミン物質の起源 / 反応スキーム / 生物利用性評価 |
Research Abstract |
毒素生産シアノバクテリアであるL.majusculaは,自らスーパーオキシドを生成し,熱力学的に安定な第二鉄(Fe(III))をより溶解度の高い第一鉄(Fe(II))に還元することで鉄を摂取すると考えられている。しかし,この鉄摂取戦略を議論する上で必要不可欠である,沿岸域で優位なフミン鉄や水酸化鉄とのスーパーオキシドの反応性は未だ把握されていない。平成18年度では,スーパーオキシドを介したL.Majusculaによる鉄摂取経路解明を行った。 まず,キサンチンの酸化によりスーパーオキシドを生成し,還元反応により生じたFe(II)をフェロジンによりトラップすることで,鉄を摂取する過程を室内実験で再現した。生物利用可能なFe(II)の生成実験から,スーパーオキシドによるフミン鉄の生物利用性はその起源により異なるが,酸性官能基を多く含むフミン物質に結合した鉄ほど生物利用性(還元速度)が低いことが明らかとなった。また,Fe(II)生成に関わる各種反応速度を測定した結果,フミン鉄の中でも特に強く結合している錯体は,錯体が還元された後解離し,摂取される経路が優位であった。以上の結果は,フミン物質の起源,すなわち土地利用や植生等の流域環境の違いが,沿岸域での鉄の生物利用性に大きな影響を与えることを示す。また,実験的に算出されたFe(II)生成に関わる各種反応速度を用いて,L.majusclaの鉄摂取に関する新たな反応スキーム(鉄摂取モデル)が構築された。 以上の研究から,スーパーオキシドを用いた藻類の鉄摂取過程に関する新たな知見が得られ,鉄摂取モデルの構築に成功している。前年度までに構築されている,沿岸域でのフミン鉄の錯平衡及び凝集モデルや,潮流拡散モデルを融合させることで,鉄の供給形態から生物摂取までの一連の過程を総合的に捉えた上で,鉄の生物利用性を評価することが可能となった。
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