2006 Fiscal Year Annual Research Report
野生チンパンジーにおける新奇行動の展開と文化的行動の発達過程
Project/Area Number |
16255007
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
西田 利貞 (財)日本モンキーセンター, 所長 (40011647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 晶子 沖縄大学, 人文学部, 助教授 (80369206)
保坂 和彦 鎌倉女子大学, 児童学部, 助教授 (10360215)
中村 美知夫 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (30322647)
座馬 耕一郎 (財)日本モンキーセンター, 特別研究員 (50450234)
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Keywords | チンパンジー / 文化 / 新奇行動 / 覗き込み行動 / 学習 / 発達 / 父性解析 / マイクロサテライト遺伝子 |
Research Abstract |
隣接集団が異なる食物メニューをもつ例として、M集団が食べないCissusの蔓をY集団では食べる例が得られた。他集団からM集団に移入してきた若いメスが新奇行動をもたらし、それが伝播するかを調べた。18年度の転入メス2頭は、転入時にすでにM集団と同じ求愛誇示や対角毛づくろいを示したことから、集団間の相違とともに、汎集団の文化的行動もあることが確認できた。子どもが集団の文化を身につける過程の1つとして、他個体を至近距離からじっと見つめる覗き込み行動かおる。覗かれる個体は、採食、毛づくろい、怪我の治療、新生児運搬などをしていることが多い。たいてい年少個体が年長個体を覗くことは学習説を支持するが、大人が覗き込んだり、複数個体が1個体を覗きこむ事例のあることは、他の社会的機能も示唆する。過年度のビデオ記録を整理し、オオアリ釣り、水中投擲、口拭い、対角毛づくろい、水鏡行動などいくつかの文化的行動について、性・年齢の異なる個体について十分な資料を得たので、行動発達の分析をはじめた。一方、腹叩き誇示、土掘り、乳首押さえ、口による赤子運搬、ペニスの足こすりなどの新奇行動は、個体レベルでは3-10年続くが、伝播することなく廃れる可能性が高いことがわかった。チンバンジーがツチブタの死体に遭遇した事例からは、狩猟対象動物の新鮮な死体を屍肉食することはあっても、非狩猟対象動物の死体は食べないことが示唆された。唾液や尿を用いてDNAを調べ、11頭の子供のうち10頭の父親を決定でき、集団外のオスが父親である可能性は低いことがわかった。長期資料から、メスの発情日を抽出し同期程度を分析した結果、M集団では互いに発情日がずれていることが示された。M集団で流行したインフルエンザ様の感染症の罹患個体数、症状、死亡個体数などを分析した。野帳50冊、DVテープ250本、写真800枚、骨格標本2体、ホルマリン漬け病原体などの資料を収集した。
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Research Products
(12 results)