Research Abstract |
計算機は芸術・自己表現において意図を拡張するためのツールになりえる.その一方で,最近,「ゲーム脳」との関連で取りざたされているように,使い方によっては使用者,ひいては,社会的なマイナス要因になりえる.本研究では,申請者がこれまでに開発を進めてきた「表情テンプレートを利用した指揮システム」iFPを中心に,音楽システム(ゲーム)と自然楽器のプレイが実施者に与える影響を,内観調査とfNIRS(Near-InfraRed Spectroscopy)を用いた脳活動計測により測定し,芸術表現における没入と「ゲーム脳」で取り上げられている没入にどのような差異があるかを探る.特に,「表情テンプレートの利用に基づく機械によるスキルの拡張」,「表現における身体性」に着目し,それらが使用者の内観と脳活動にどのように作用しているかという問題について検証を試みることを課題とした. iFPにおける被験者実験から,表情テンプレートの利用,慣れたインタフェースの利用,好きな音楽の題材としての利用で,前頭前野における脳活動レベルが低下することが浮かび上がってきた.さらに,BGMとしての聞き流し,しっかりとした聴取,iFPによる演奏の場合の比較においては,後者にいくほど,前頭前野における脳活動レベルが低下することが確認された.内観報告との照合結果からは,音楽的没頭と脳活動レベルの低下に相関があるものと思われる.和太鼓を用いた拍打実験からは,逆に,前頭前野の脳活動が賦活化する状況が確認された.さらに,「場」の効果を実証するものとして実施したソロセッション,グループセッションの比較においては,グループセッション,特に,笑顔時に前頭前野の脳活動が賦活化する状況が確認された.
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