Research Abstract |
クロマチン免疫沈降とDNAチップの技術を用いた転写因子結合に関する網羅的なデータ(ChIP-chipデータ)から,プロモータ領域に結合する転写因子の結合部位を精度よく分別的に発見する新しいアルゴリズムを設計し,そのシステムを構築した.酵母菌のデータに対して本システムを用いて計算機実験を行ったところ,既存のすべての結合部位発見プログラムよりも優れた性能を示した. また,タンパク質間相互作用データを用いた協調的転写因子の推定を行うアルゴリズムの開発を行い,酵母菌のデータを用いた計算機実験を行った.従来の協調的転写因子推定は遺伝子発現データを利用して行われてきたが,本手法では,相互作用ネットワークに基づいたタンパク質間距離を定義,それを用いて協調的転写因子の推定を行う,クロマチン免疫沈降データから転写因子のターゲット遺伝子群を決定し,遺伝子群内のタンパク質間距離の計算,統計学的検定手法による距離の評価により,協調的転写因子の推定を行った.S. cerevisiaeに対して本手法を適用したところ,24組の協調的転写因子ペアが推定された.このうち半数は,文献や既存手法で同定されたものであった.本手法で新規に推定された協調的転写因子としてFh11/Rap1やRap1/Sfp1があり,さらに3つのFh11/Rap1/Sfp1転写因子間の協調性も検出された. 一方,ヒトFGFR-1の転写活性化機構は不明であったことから,ヒトFGFR-1のプロモーター領域を新規にクローニングし,その転写活性化機構の解析を行った.ヒトFGFR-1プロモーターは,E2F-1によって転写活性化されることを見出した.さらに,E2F-1はヒトFGFR-1のプロモーターの-41/-22領域に結合して,かつ転写制御している可能性が示された.E2F-1の結合はChIP assayによりIn vivoでも確かめられた.また,E2F-1はSp1と協調して転写を制御することが知られてきたので,Sp1の関与を検討した.ヒトFGFR-1プロモーターの-10/+3領域に変異を導入した結果,E2F-1による反応性が著しく抑制された.また,その領域にSp1-like factorが結合することを示した.以上のことから,ヒトFGFR-1の転写はE2F-1とSp1-like factorによって制御されていることを明らかにした.
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