2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳の左右差の形成機構と高次脳機能におけるその意義の解明
Project/Area Number |
16300101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 功 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (20183741)
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Keywords | 脳 / 右脳・左脳 / 脳の左右差 / 脳の非対称性 / 海馬 / 神経回路 / シナプス / NMDA受容体 |
Research Abstract |
●初期発生過程における脳の左右差形成機構の解析-ivマウスを用いた検討。 マウス内臓器官(中・内胚葉系由来)の左右軸形成は、発生初期nodeに分泌されるnodalの発現が、繊毛の回転運動によって発生する層流(nodal flow)の影響で、体軸の左側で高まることから始まることが知られている。ivマウスはこの繊毛運動を引き起こすモーター蛋白(dynein)の遺伝子に変異を持つミュータントマウスであり、左右軸決定に関与する遺伝子に変異を持つ様々なミュータントマウスの中で、成獣にまで成長し、繁殖が可能な唯一の系統である。ホモ接合型のivマウスからは内臓逆位と正位のマウスが1対1の確率で生まれる。 我々は、ivマウスから作成した海馬スライスを用い、シナプスNMDA受容体応答のRo25-6981感受性およびシナプス可塑性(LTP)の生後発達などを指標として、iv変異が海馬神経回路の非対称性に及ぼす変化を解析した。その結果、ホモ接合型のivマスでは(内臓の正位、逆位に関わらず)、脳の左右の非対称性が消失していることを示す結果を得た。一方、対照群として用いたヘテロ接合型のivマウス(nodal flow正常)は、野生型マウスと同様の非対称性を示した。 この結果は、左右非対称性の形成機構は内臓などの内胚葉系と神経系など外胚葉系では異なっていることを示唆している。 今後はivマウスを用いた行動解析を行い、左右差の消失が脳の高次機能にどのように影響するか等を解析する。
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