2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳の左右差の形成機構と高次脳機能におけるその意義の解明
Project/Area Number |
16300101
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 功 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 准教授 (20183741)
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Keywords | 脳 / 右脳・左脳 / 脳の左右差 / 脳の非対称性 / 海馬 / 神経回路 / シナプス / NMDA受容体 |
Research Abstract |
本研究は、内臓に左右の逆位を示すivマウスを用いた解析と海馬スライスの組み合わせ培養系を用いた解析を2つの柱とし。これらの解析によって得られた成果を、左右差形成シグナルの同定や行動学的解析へ繋ぐことを基本構想とした。 1)ivマウスを用いた解析:生理学的および解剖学的解析の結果、ivマウスの脳では左右の非対称性が消失し、両側がともに右脳の性質を示している(右側異性)ことが明らかになった。これにより、脳と内臓では左右差の形成機構が異なることも明らかになった。本成果はPLoS Oneに掲載された(in press)。 2)組み合わせ培養系を用いた解析:非対称性形成に関与する分子のシナプス局在を調べることを目的として、異なるマウスから調整した、海馬CA3野とCA1野を組み合わせて培養する方法を考案した。これまでに培養法および、これを用いた生理学的解析法を確立することができた。 3)左右差形成シグナルの同定:ivマウスと野生型マウスの海馬に発現している遺伝子を比較することによって、非対称性の形成と維持に関与する可能性を持ついくつかの遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子をノックアウトした遺伝子改変マウスを解析した結果、海馬神経回路の非対称性が完全に消失しているとマウスを見いだした。 4)行動学的解析:ivマウスは遅延交替反応課題において野生型マウスよりも有意に劣る成績を示したが、物体識別では野生型マウスよりも好成績を示した。また、小動物用fMRIを用いた解析を行い、空間学習時の脳活動は野生型マウスでは左右非対称であるが、ivマウスでは左右差が消失していることを示唆する結果が得られた。 以上のように、本研究は当初の計画に沿ってほぼ順調に進行し、将来につながる成果を上げることができた。
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