2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘモグロビン小胞体(ナノ粒子)の酸素放出過程解析と虚血部位酸素の機序解明
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16300162
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 早稲田大学, 理工学術院, 助教授 (70318830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 紘一 慶應義塾大学, 医学部(外科), 教授 (80051704)
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Keywords | 人工赤血球 / 微小循環動態 / ヘモグロビン / 虚血 / 酸素放出 / レオロジー制御 / 輸血代替 / リポソーム |
Research Abstract |
血管性障害による虚血のため低酸素状態に陥った組織において、細胞壊死を回避するには、酸素供給の回復が先決である。この際、虚血領域への酸素供給は側副経路からの血流に依存せざるを得ないが、血流中に人工赤血球が存在すれば、酸素供給の向上が期待できる。これまでに有茎皮弁モデルを用い、人工赤血球(Hb小胞体)をヒドロキシエチルスターチに分散させた溶液で血液交換を行い、酸素親和度が高く(P50値が低く)、粘度が高いととが虚血領域の血流改善と酸素分圧の向上に有効である事が明らかになってきた。本年度は、Hb小胞体(P50=9mmHg)をそのまま負荷投与した場合の効果を検討したところ、血漿粘度の増大がみられ、これが血管壁での剪断応力を生じ、血管機能の恒常性、血行動態の改善、血管壁透過性亢進の抑制、虚血性炎症の抑制をもたらした。このように血液粘度が虚血性領域の酸素化に重要なファクターであることが明らかになってきたので、Hb小胞体と各種代用血漿剤を組み合わせた場合の粘弾性挙動を解析したところ、アルブミンに分散させた場合にはほぼニュートン性流体を示し、粘度は血液と同等であったが、高分子量ヒドロキシエチルスターチ溶液やゼラチン溶液ではHb小胞体がflocculationを形成し、粘度上昇が見られた。剪断速度が大きくなるほど粘度が低下するShear-thinkingが観測され、flocculationは可逆的で且つ極めて速い反応であり、微小流路通過試験でも塞栓形成は無かった。このように、3年次計画の最終年では、虚血領域の酸素化に重要な因子として、酸素親和度の制御のみならず、Hb小胞体の分散する流体としてのレオロジー制御の可能性が明らかになった。Hb小胞体の物性値が容易に調節できるので、今後テーラーメード人工赤血球として様々な臨床応用が期待できる。
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Research Products
(11 results)