2006 Fiscal Year Annual Research Report
廃用性萎縮に対する温熱負荷が筋機能に及ぼす萎縮予防効果
Project/Area Number |
16300188
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
武田 功 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (00163402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 英己 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (20278998)
上月 久治 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (20175326)
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Keywords | リハビリテーション / プロテオーム / 環境 / 生理学 |
Research Abstract |
骨格筋の廃用性萎縮は局所や全身の安静により発生し、収縮タンパク質量の減少のみならず、ミオシン重鎖(MHC)アイソフォームの発現も遅筋型から速筋型へ移行することが知られている。また、微小血管領域では毛細血管ネットワークが再構築され、赤血球速度が増加し、血流動態に変化が及ぶ。毛細血管ネットワークの再構築には血管増殖関連因子による調節系やアポトーシスなどによる細胞死が関与すると考えられる。そこで、廃用性萎縮の進行を予防する観点から温熱負荷による萎縮予防の可能性について検討した。本研究ではWistar系雄性ラットを使用し、Moreyの後肢懸垂を行う前に温熱負荷して、ヒラメ筋の筋原線維タンパク質含有量、MHCアイソフォームの割合、熱ショックタンパク質(HSP72)の発現、吻合毛細血管の3次元構造、血管新生因子等を測定した。 筋原線維タンパク質含有量は、萎縮筋では有意な減少を示したが、温熱負荷後にMorey法による後肢懸垂を行うと筋原線維タンパク質含有量の低下を減衰させた。また、MHCアイソフォームは、萎縮では遅筋型Iの減少と速筋型IId/xの発現が観察されたが、温熱負荷後の後肢懸垂モデルでは遅筋型Iの減少と速筋型IId/xの発現が抑制できた。萎縮筋では、筋原線維タンパク質の減少に加えて、毛細血管構造の退行が観察された。特に吻合毛細血管の消失し、吻合部内皮細胞にTUNEL陽性が認められた。萎縮筋ではVEGFの低下に加えて、HIF-1alpha、KDR/Flk-1、angiopoietin-1のmRNAの有意な低下が観察された。また、Flt-1やTie-2 mRNAも減少傾向であった。 これらの結果から、後肢懸垂前の温熱負荷は廃用性に伴う筋萎縮の進行を予防できることを示唆する。また、廃用性萎縮筋では血管増殖関連因子や保護タンパク質の低下を伴って血管の退行が進行していることが確認された。HIF-1alpha mRNAの低下から萎縮筋では酸素需要の低下が示唆され、このシグナル経路は血管増殖関連因子を抑制させ、毛細血管ネットワークが再構築されたものと考えられる。また、HSP70の低下は、血管内皮細胞のアポトーシスの誘導を増強させたものと考えられる。これらの相乗効果によって廃用性萎縮筋の毛細血管ネットワークが退行したことが示唆される。本研究で得られた結果は術前や安静前の温熱療法の筋萎縮予防の効果を検証したものと考えられる。
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Research Products
(6 results)