2005 Fiscal Year Annual Research Report
バスク民族のスポーツ文化政策に関する総合的調査研究
Project/Area Number |
16300211
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
竹谷 和之 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (80163400)
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Keywords | バスク民族 / スポーツ文化 / スポーツ政策 / エスニック・スポーツ / ペロタ・バスカ / 漕艇 / 混合競技 |
Research Abstract |
平成17年度は、バスク州のギプスコア県及びナバラ州のナバラ県におけるバスク民族スポーツ政策の調査・研究である。前年度に実施したバスク州政府の協力のもと、ギプスコア県、バスク民族スポーツ連盟を、協力研究者エミリオ氏により漕艇連盟のスポーツ文化政策の聞き取り調査を実施した。またナバラ州ナバラ県でも、共同研究者のエチェベステ氏及び研究協力者のアラストア氏の協力により、ナバラ県のスポーツ政策担当者及びナバラ県バスク民族スポーツ連盟、ペロタ・バスカ連盟、現地スポーツ普及委員などに聞き取り調査を実施した。 ギプスコア県は2000年ころよりバスクスポーツ政策を掲げ、県バスクスポーツ連盟と連携して学校教育において導入を図ってきた。しかし連盟によればまだ不十分なカリキュラムであり、理論(歴史、用具の説明など)の時間を設けるなどして改善を申し入れている。さらにイカシトラ(民族学校)から始まったイカシピロタ(ペロタ・バスカ)はほとんどのイカシトラが取り入れており、授業時間になれば、イカシトラだけでなく、公立学校の生徒も学習にくる。 オンダリビア市の漕艇クラブは、市内の3つの小中学校に漕艇に関する学習プログラムを提示している。各学校はそれらを採用し、体育授業中に漕艇クラブに赴き、指導を受ける体制が整っている。学習後には、それぞれの内容に合致した大会を開き、バスクの漕艇競技であるレガッタの動機づけを高めている。 ナバラ県は、2年前よりギプスコア県よりも充実したバスクスポーツ政策を実施している。とくに北部地域では、バスクスポーツが日常生活に浸透させるようなプログラムを試みている。社会プログラムとしてサカナ(Sakana)地方では、丸太切り、石かつぎ、混合競技(数種類のバスクスポーツ)の普及のために、体制を整え、補助金を整備した。それまで15年にわたり、サカナ地方が独力でバスクスポーツ大会を進めてきたことが評価されたのである。またペロタ・バスカも年齢別のプログラムが浸透し、多くのプレイヤーを排出している。この効果により、ナバラ県ではサッカーよりもペロタ・バスカの人気が高い。バスクスポーツ政策の成功例として考えてよいであろう。 以上、ギプスコア県とナバラ県はこの数年でバスクスポーツ文化普及体制を整え、効果的な運営を目指して試行する段階にさしかかっている。これは伝統の保護だけでなく、近隣の数世代が混じり人間関係を保持しながらスポーツ文化を継承するという、エスニックスポーツ特有の組織が健在であることを物語っている。
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Research Products
(1 results)