2005 Fiscal Year Annual Research Report
プレート収束帯における前弧域の隆起プロセスの再検討と大地震予測に関する総合研究
Project/Area Number |
16300293
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宮内 崇裕 千葉大学, 理学部, 助教授 (00212241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前杢 英明 広島大学, 教育学研究科, 助教授 (50222287)
苅谷 愛彦 千葉大学, 自然科学研究科, 助手 (70323433)
伊藤 谷生 千葉大学, 理学部, 教授 (50111448)
宍倉 正展 (独)産業技術総合研究所, 活断層研究センター, 研究員 (00357188)
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Keywords | プレート収束境界 / 地震間沈降 / 巨大地震 / 三陸海岸 / 機械ボーリング / 放射性炭素年代測定 / 広域テフラ / 完新世 |
Research Abstract |
プレート収束境界の前弧域において見られる海岸地形の陸化過程から知られる動的な地殻の地震時隆起-地震間沈降ダイアグラムを明らかにするために,三陸海岸において変動地形学的および第四紀学的手法による実証的調査を行った。得られた成果・知見は以下の通りである。 1.大縮尺空中写真の微地形判読および現地踏査の結果,約300kmにわたる海岸部には,北端の八戸・種市付近を除き,顕著な完新世離水海岸地形(海岸段丘)は存在しないことが判明した。 2.河口部低地における2カ所(船越・久慈)における機械ボーリングによるコア採取・堆積物の観察に基づくと,砂州背後の潟湖環境あるいは内湾環境は海面下27mの約9000年前前後まで追跡することができ,連続的な地殻沈降が認められた。コアより得られた炭素同位体年代測定試料(腐植層・木片・貝層)は全部で30個採取された。テフラ層は2層検出され,火山ガラスの屈折率測定に基づき,標高-12mにあるガラス質軽石層は十和田中掫火山灰層(To-Cu)に対比された。 3.9000年〜6000年前までは内湾に泥層が堆積する環境が保持されていたが,6000前に移行急激に浅海化し,2000年前までの間に津波を伴うイベントが複数回認められる。 4.コアにおいて信頼できる炭素同位体年代値その深度から知られる沈降速度は,過去9000年間では最大3mm/年程度である。 5.験潮場における過去40-50年間の潮位記録に基づくと,5mm/年(宮古),9mm/年(釜石),7mm/年(大船渡)の地殻沈降速度が得られた。 6.最近の5-9mm/年の速度で沈降する様子は地震間における前弧域の地殻変動の特徴を示し,プレート間カップリングに伴う引きずりに伴うものである。それに比して完新世を通じてのそれは3mmほどであり有意に小さい。この差異は,完新世中期(6000年〜2000年前)に海岸部を急激に隆起させ,沈降速度を見かけ上緩和させた大型の地震隆起イベントの可能性が少なくとも1回は示唆される。仮に1回の地震性地殻変動によるものであるとすると,海岸部での地震隆起量は5m以上になる。このような巨大地震イベントは,太平洋プレート/ユーラシアプレートの固着域でのすべりでは説明できず,プレート境界から立ち上がる覆瓦スラストの運動に伴う可能性がある。
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[Book] 日本の地形3 東北2004
Author(s)
宮内崇裕(分担執筆)
Total Pages
355
Publisher
東京大学出版会
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より