2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境放射能と溶存希ガスをトレーサーとした地球規模水循環機構での地下水の役割の解明
Project/Area Number |
16310009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬原 保典 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (30371537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 卓見 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90335240)
中野 朋子 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (30373020)
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Keywords | 溶存^4He濃度 / ^<36>Cl濃度 / 地下滞留時間 / 水循環速度 / ラジュウム同位体比 / 浅層地下水 / 深部地下水 / 淡水資源 |
Research Abstract |
深部地下水の滞留時間について、溶存^4He濃度と^<36>Cl濃度の相関を基に、地下水中に蓄積してくる^4Heの蓄積速度を求め、地下水中の過剰^4He濃度を基に、100万年を超える地下水の滞留時間を推定する手法の提案を行った。まず、この手法の検証を過去にオーストラリアの大鑽井盆地で集められた溶存^4Heと^<36>Clデータを基に行った。検証された手法を十勝平野の1000m程度の深部地下水に対して適用した。その結果、十勝平野地下の堆積盆の中心に向かって堆積盆の縁から地下水が涵養され、中心部には100万年を超える非常に長い滞留時間を持つ地下水が存在することが確認された。また、人間活動において最も重要な淡水資源は、河川水や比較的浅い循環速度が数ヶ月から1000年程度と比較的速い地下水である。滞留時間が短い数年から数十年の地下水は、^3H+^3He年代測定によって正確に滞留時間の推定が可能である。一方、100年を超え^<14>C年代測定によって十分な精度で測定が可能となる1000年程度の時間は、適切に滞留時間を推定する測定手法が存在せず、地下水の滞留時間を推定する上では空白の時間とも呼べる。この空白の時間を埋める測定手法の一つとして、地下水中に溶存する^<228>Ra/^<226>Ra放射能比を基に地下水の滞留時間を推定する手法として、Mn-Fiberへのラジュウムの吸着による低濃度のラジュウム測定手法の開発と河川水、浅層地下水、温泉水を対象に^<228>Ra/^<226>Ra放射能比を基にした滞留時間の推定を行った。その結果、過去に実施された柿由川での研究事例や温泉データとの比較評価を通じて手法の検証を行った。以上の種々の環境放射能や希ガスを天然トレーサーとして活用した地下水年代測定法を駆使して、地下水の滞留時間を測定・評価した。測定された滞留時間の違いを基に、地球規模の水循環を考えた場合、淡水資源の大部分を占める河川水の基底流量を含めた浅層の地下水は、数ヶ月から数十年程度の時間遅れで地球規模での水循環に寄与しているとの結論を得た。これらの成果を基に3ヵ年の成果報告書の取り纏めを行った。
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Research Products
(6 results)