2004 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴの海のワイズユースをめざして:海洋環境資源の最適利用と資源管理に関する生物学的・社会学的研究
Project/Area Number |
16310028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
新保 輝幸 高知大学, 大学院・黒潮圏海洋科学研究科, 助教授 (60274354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 耕作 高知大学, 大学院・黒潮圏海洋科学研究科, 教授 (20200587)
深見 公雄 高知大学, 大学院・黒潮圏海洋科学研究科, 教授 (30181241)
野島 哲 九州大学, 理学研究院, 助教授 (30112288)
婁 小波 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (50247970)
三浦 大介 神奈川大学, 法学部, 助教授 (30294820)
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Keywords | サンゴ群集生態系 / 生物多様性 / 生態系の修復 / サンゴの海をめぐる紛争 / 資源管理 / 海業 / 海面利用調整 / エコミュージアム |
Research Abstract |
本研究では、サンゴ群集とその関連生態系に対する、陸域の経済活動やレジャー・ダイビングをはじめとする人間活動の影響を分析し、持続的に自然資源を利用していくためにどのような社会・経済的な仕組みが可能なのかを明らかにした上で、サンゴの海を一定の利用ルールの下で保全しつつ多面的に利用し、地域を振興していく方策を提言することを目指している。そのために、主たるフィールドは高知県柏島に定め、サンゴおよび関連生態系の自然科学的調査を行うと共に、地先の海の利用に関わるステークホルダーに聞き取り調査を重ね、海の利用と保全をめぐる問題点を洗い出し整理・分析した。 ・柏島で潜水調査を行い、サンゴの現状を把握した(11月)。島北側の岩礁及び礫底には良好なサンゴ群集が見られ、10m以浅にはクシハダミドリイシやエンタクミドリイシを中心としたテーブル状サンゴが、また10m以深にはキクメイシ科を中心とした塊状サンゴが優占する。調査期間中に確認された造礁サンゴは50種ほどで、その多くは沖縄等サンゴ礁域に分布する種類とやや異なり、いわゆる南日本沿岸型に区分された。2004年に多数襲来した台風のため、サンゴが破壊されている海域があるが、稚サンゴの定着が見られ、5年程度で回復が見込まれる。定期的なモニタリング調査により、サンゴ再生とそれに伴う生物多様性の回復過程について新知見が得られることが期待できることが分かり、そのような調査を計画・実施中である。 ・柏島東側の竜の浜にて潜水調査を行い、磯焼けとそこに生息するウニ5種との関係を主に食物の関係から調査した。底質、石灰藻を含む藻類の繁茂状態、各種の生息場所および個体数、消化管内容物、摂食器官の形態を調べ、食性と摂食に関連する形態の間に明確な対応が認められることを明らかにした。この結果は、磯焼け対策として現場に生息するウニ類を全て除去する必要はなく、一定の形態の摂食器官を持っウニのみを除去すればよいことがわかった。 ・自然破壊行為を伴う開発事業のうち、海域におけるサンゴへ影響を及ぼすことのある採石事業をとりあげ、実定法(採石法)に規定されている「公共の福祉」概念が、かかる開発事業の抑止力たる法概念となりうるかについて検討した。 ・社会科学系メンバーにより柏島を中心とする大月町沿岸域でサンゴ海の利用の保全に関わるステークホルダー(ダイビング業者、漁'協・漁民、行政、地域住民、NPO等)に対する聞き取り調査を継続中である。また比較対照事例として沖縄県(今年度は恩納村、宮古島、石垣島、与論島)、徳島県牟岐町においても現地調査を行った。それぞれの地域は、過剰なダイビングや陸域の農業・畜産、土木工事によるサンゴ群集生態系の圧迫等の問題を抱えており、地域のステークホルダーが協調して環境保全への取り組みを進めていく必要がある。しかしステークホルダー間の紛争等の理由でうまく協調がとれず一種の「共有地の悲劇」的な問題が起こっている。海業等で地域の持続的発展を図る中で相互の利益を調整すると共に、漁業権に関わる問題等を整理して海面利用調整を進めていく道筋を明らかにすることが急務であり、そのような検討を継続中である。
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Research Products
(6 results)