2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境同位体を用いた干潟・湿地生態系の自然再生事業の評価手法に関する研究
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16310032
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
野原 精一 独立行政法人国立環境研究所, アジア自然共生研究グループ, 室長 (60180767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広木 幹也 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 主任研究員 (40142103)
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Keywords | 水循環機能 / 分解機能 / 自然再生事業 / 干潟 / 塩性湿地 / 物質循環 / 底質 / 間隙水 |
Research Abstract |
盤州干潟における温度変化の観測を新たに実施した。大潮時に塩生湿地を含む河口域の盤州干潟の環境変化を観測した。航空写真は645判、可視画像はCCDカメラ(CCD-MC100、解像度60cm)、熱画像はサーモトレーサー(TS7302、解像度140cm、最小検知温度差:0.08℃)を用い、高度約430mから2004年8月18日の正午過ぎに撮影した。また、現地の温度変化を8月14日〜21日に気温、河川、池等で自記式水温計(精度±0.2℃)による10分毎の連続測定を行った。また、2005年3月と2006年3月の大潮の干出時に栄養塩濃度、底生藻類量(表層1cm)と水の酸素安定同位体比(δ^<18>O)を測定した。 熱画像の観測によると裸地は40℃近くなったが、干潟は30〜34℃と比較的低く、干潟に取り残された浅い水面より砂連上部(干潟凸地)で比較的温度が低かった。観測当日には強い風が吹いており、干潟の表面では蒸発による気化熱による温度低下が見られたものと解釈できる。干潟は浅い水面の有無で多少違いがあるが比較的均一の温度分布をしていたが、裸地のような極端な高温にまで至らなかった。熱画像観測日の連続測定した温度変化は、どの池も同じ様な日変化を示し潮の干満の影響による周期は見られなかった。日光の強い13時頃に水温が最も高くなり場所による違いは見られないが、夕方から夜にかけての水温の下がり方は地点によって異なって明け方5時頃に最低水温を記録し日格差は平均して9.7℃であった。一方、河口水は日最高水温27.5〜31.6℃で平均の同格差は4.9℃、河口域干潟では日最高水温28.5〜41.5℃で日格差は10.9℃であった。この期間の気温の日最高温度は27.2〜34.2℃、日格差は8.6℃で、温度の日変化は干潟が最も大きかった。 2005年3月の盤州干潟の硝酸濃度は沖約1.2kmで高いが0.3ppmでほぼ同じ様であった。水の酸素安定同位体比は電気伝導度も同様に沖に向かって0%に近づき高くなって行くが、約0.6km付近でやや同位体比が小さくなり、淡水または地下水の流入が認められた。水温の熱画像観測では確認できないが、干潟に淡水の湧く場所があると考えられた。微細藻類の総量としてのクロロフィルa量は1〜5.7μgg-1で変動があるが、沖に行くと1μgg-1に収れんした。淡水の湧き出しと微細藻類量との関係は特に認められなかった。
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