2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16310068
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中林 誠一郎 埼玉大学, 理学部, 教授 (70180346)
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Keywords | SBSL / 超音波 / 爆縮 / 発光 / 気液界面 / 気泡 / キャビテーション / 高温 |
Research Abstract |
完全に脱気をした水を、球対称な容器に入れて、その中に超音波の定在波を正しく2波長立てる。この時、容器の中心では、最大振幅位置を固定した膨張圧縮が規則正しく繰り返される。容器の中へ、シリンジから気泡を導入すると、ただ1つの気泡だけが、中心に捕獲され、超音波の励振周波数と同期して気泡径の膨張圧縮を繰り返す。対称性良く設計されQ値の高い容器を用いると、気泡は1日ちかく安定に捕獲された。捕獲された気泡は、捕獲後数分して青白く発光を始め、さらに、この発光は気泡が捕獲されている間ずっと持続する。これは、単泡性超音波発光(Single Bubble Sono-luminescence ; SBSL)と呼ばれる現象である。この発光のスペクトルは、250nm近くにピークを持つ黒体輻射スペクトルと良く一致し、かつ、発光は気泡が超音波で急激に圧縮される(爆縮)タイミイングと同期したパルス発光である。また、発光のパルス巾は、10ピコ秒程度であることが判ってきた。これらの事実は、気泡が圧縮される極めて短い時間の間に、気泡の内部温度が、瞬間的に数万度にも達していることを示唆する。本研究では、(1)気泡内の化学反応を、おもに発光スペクトルから明らかにする事。(2)SBSL発光および、SBSL由来のエキシマー遠紫外発光を、新規なナノ光化学反応系の構築へ展開する事を目的とした。流体力学的な計算機シミュレーションにより、爆縮気泡内の分子分布は、均一等方的ではないと言われている(Strey,1999,J.Fluid. Mechanics : Strey & Szeri,2002,PRL)。気泡の中心部には、分子量の小さな軽い分子が集まり、それを分子量の大きい重い分子が取り巻く。実験的には、この事実は確認されてはいないけれども、爆縮気泡内での化学反応を設計する上で、この理論の予測は極めて重要である。なぜなら、爆縮時の超音波エネルギーは気泡中心部に集中し、もしそこに、反応を期待する2種以上の分子が共存しないならば、爆縮誘起の気泡内化学反応は、成就しないと考えられるからである。以上の予測に鑑み、平成17年度では、Strey予想(爆縮気泡内での分子種の空間分離)の実験的検証を行う。具体的には、らく酸を加えた水溶液中に、3種類の希ガス(He, Ar, Xe)の内1種類をシードして、溶液のpHを変えながら、SBSL発光を測定する。このとき、Xeガスの場合だけ発光強度とピークシフトの変化が顕著に現れ、He, Arでは、空気気泡で観測されたpH効果は、顕著に観測された。この事は、He, Ar, Xeおよびらく酸の分子量が、それぞれ、4,40,131,88である事を考え合わせると、らく酸(88)より唯一重いXe(131)だけが、らく酸分子を爆縮気泡の中心に追い込む事ができ、このときに限り、らく酸分子の化学分解が進み、発光強度の低下とピークの赤方シフトが観測されるものと了解された。このように、Strey予想を、実験的に証明できた。
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Research Products
(7 results)