2006 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化進行下のサンゴ群集の回復と維持:慶良間から沖縄本島への幼生供給と群集回復
Project/Area Number |
16310158
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教授 (50153838)
|
Keywords | 造礁サンゴ / サンゴの白化 / サンゴ幼生定着 / サンゴ幼生分散 / 沖縄島と慶良間列島 / サンゴ群集回復 / サンゴ礁 / オニヒトデ |
Research Abstract |
サンゴがよく生存し、周辺地域では唯一配偶子を大量に生産できる個体群が存在している慶良間列島でのサンゴ群集の維持力と、サンゴが激減している沖縄島でのサンゴ群集の回復力を推定するために、慶良間列島で2地域、沖縄島で3地域を選定し、階層的に合計22の地点を設定し調査研究を実施した。各地点でサンゴの放卵放精がある5月の満月までに幼生定着基盤を設置し、2ヵ月後に回収した。また回収時に各地点でサンゴ群集の調査を行った。その結果、以下の点が明らかとなった。 1.沖縄島ではサンゴ群集の回復は極めて局所的で、調査地点の10%程度サンゴの被度が30%を超えるたのみであった。一方慶良間列島では、オニヒトデの捕食により全体的にサンゴが減少し、座間味地域のオニヒトデ駆除区域ではサンゴ群集が良好に維持されていたが、渡嘉敷地域ではサンゴ被度の著しい低下が認められた。 2.沖縄島と慶良間列島ともに、幼生供給源であった慶良間列島でのサンゴの減少に伴い、サンゴ幼生供給量が減少していることが、過去の調査結果との比較で明らかとなった。 3.繁殖様式が放卵放精型で幼生の浮遊期間が長いミドリイシ科について、親サンゴから幼生が分散する距離は、200km以内に限られていることが示唆された。 4.沖縄島でサンゴ回復が進んでいる場所で、ミドリイシ属サンゴの群体サイズと性的成熟の関係を調査した。その結果、枝の短い種では直径が12cm、枝の長い種では直径が17cmを超えると成熟が始まることが明らかとなった。 5.ミドリイシ属サンゴが大型海藻と接触すると、成長率が低下しかつ配偶子生産量も減少することが明らかとなった。これはサンゴが大型海藻との接触で受けた傷の修復に、資源を使うために起こると考えられる。
|