2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16320019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
越 宏一 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60099934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福部 信敏 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (90049320)
松尾 大 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (00119364)
田口 栄一 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (50011333)
越川 倫明 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (60178259)
松田 誠一郎 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (20239031)
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Keywords | 星座 / アラテア / ファイノメナ / 天文学写本 / ギリシア神話 / 西欧中世美術 / ギリシア美術 / 古代末期美術 |
Research Abstract |
紀元前3世紀にアラトスによって著されたギリシア語の『ファイノメナ(天象)』は、現存する西洋の古典文献中、星座についての組織的な記述が見出される最古のものである。この天文学詩はローマ時代にラテン語に何度も翻訳された。本研究は、「アラテア」と総称される一連のラテン語訳テクストを含む多数の古代以後の写本に添えられた星座図像を通して、古代の図像サイクルを復元的に考察すると共に、ギリシア起源の図像がどのような形で後世に伝播したのかを具体的に解明しようとするものである。この場合、古代および古代末期に制作された挿絵入りのアラトス写本並びに「アラテア」写本は一点として今日まで伝えられていないので、初期中世以降ルネサンス時代までの写本群を主たる研究対象とせざるをえない。 このため、初年度においては、それらの写真資料を国内外の所蔵先から入手することに力を注ぎ、先ず、研究基盤を整備した。それに基づき、「アラテア」写本、および、それらから派生した星座関連写本における星座図像サイクルをテクストのリセンションを考慮しながら、先ず、大まかに分類することを試みた。それと共に、特に、「アラテア」写本群の中で最も重要な「ゲルマニクス」写本のサイクルを構成する各個別図像の特徴を考察した。その結果、それらの幾つかは、明らかに初期ギリシア美術の造形的伝統に遡るものであることが判明した。恐らく、アラトスのギリシア語天文学詩本には、少なくともヘレニズム時代にはすでに図像サイクルが添えられていたのであろう。このコンテクストで、古代ギリシア美術の伝統を伝える星座図像の唯一の現存作例といってよい、天球儀《アラトス・ファルネーゼ》の研究も集中的に行った。 この他、特に我が国の星曼荼羅をも調査した。その結果、「アラテア」の図像サイクルに見出される黄道12宮星座の図像タイプは、おそらくインドや中国を経由して、そして10-13世紀には我が国にも伝えられたことが実証された。
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