2004 Fiscal Year Annual Research Report
中国語の構文及び文法範疇形成の歴史的変容と汎時的普遍性-中国語歴史文法の再構築-
Project/Area Number |
16320049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 英樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (10272452)
玄 幸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系(人文学部), 助教授 (00282963)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (90344530)
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Keywords | ヴォイス / 古代中国語 / 授与 / 敦煌文書 / 中国語口語史 / 受動 / 早期漢訳仏典 / 結合価 |
Research Abstract |
それぞれが分担する時代分野を対象に、資料の収集と分析を通して基礎的研究の充実を図ると同時に、漢語の汎時的普遍性を視野に収めつつ、以下のような研究を行った。木村は現代の普通話および方言に関するヴォイス研究の一環として、有標ヴォイス構文の体系を、「広義使役事態」に対応する構文カテゴリーとして捉え、その意味的・構文的特徴を明らかにした。また、授与動詞の文法化の問題にも焦点を当て、授与と受動の構文ネットワークに関する方言類型論的考察を行った。大西は古代中国語のヴォイス研究の一環として、動詞「為」(〜である、〜となる)と取り上げ、その項構造を解明した上で、「為」を含む動詞句において能動文(使役文)と受動文とが表面的には同一句型で表現される現象を考察し、その共時的レベルでの句構造の相違と歴史的な成立過程とに一定の合理的解釈を与え得ることを明らかにした。玄は、本プロジェクトのための基礎作業として、近代中国語コーパス(Corpora)構築に着手した。基づく史料の真偽問題を考察する視点から昨年9月に浙江省博物館に所蔵される敦煌文書原資料の実見調査を行った。また、明代口語の研究の一環として、『朴通事諺解』に現れる言語史料についての分析を継続的に行い、昨年は4度にわたって名古屋・大阪で開催された朴通事研究会にも参加した。松江は、早期漢訳仏典を主資料に、古漢語における疑問代名詞目的語の語順変化メカニズムについて研究を進め、その変化を促した主要な要因は、目的語の前置によって生ずる統語的曖昧性を軽減しようとする欲求であることを指摘した。同時に、当該の述語動詞が如何なる構文をとる動詞であるのかという共時レベルにおける差異が、目的語の語順変化という通時レベルでの振る舞いに影響を与えていることを明らかにした。
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