2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国語の構文及び文法範疇形成の歴史的変容と汎時的普遍性-中国語歴史文法の再構築-
Project/Area Number |
16320049
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 英樹 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20153207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (10272452)
玄 幸子 関西大学, 外国語教育研究機構, 教授 (00282963)
松江 崇 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (90344530)
|
Keywords | 北京官話 / アスペクト / 近代中国語 / 敦煌文書 / 使役構文 / 上古中国語 / 疑問代名詞 / 先秦出土資料 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、それぞれが分担する時代分野を対象に、資料の収集と分析を通して基礎的研究の充実を図ると同時に、漢語の汎時的普遍性を視野に収めつつ、以下の研究を行った。 木村は、北京官話において従来アスペクト助詞とみなされてきた複数の形式について考察し、それらが、事柄や事物に時空間的な実存性を付与し、それによって事柄や事物を具体化し、個別化する機能を本務とするものであることを明らかにし、併せて、現代中国語において「実存相」なる機能範疇を設定することの重要性を提示した。 大西は、上古中国語における語彙的使役と文法的使役の相違に関する研究をさらに進化させるべく、先秦時代の使役構文とその意味の変容を追跡した。その結果、動詞「使」による使役構文の拡張の一つが、被使役の出来事における述語動詞の自主性の低下によって被使役者の無生化が引き起こされ、文法的使役でありながら意味的には直接使役に接近してゆく過程として分析しうるという見通しが得られた。また先秦出土資料の解読と整理も平行して進めた。 玄は、『亜細亜言語集』などの早期中国語テキストを対象に、近代中国語コーパスのデジタル化に継続して取り組んだ。また、近代中国語(口語)研究の一環として唐代宋代口語資料である敦煌文書の原資料調査をロンドンBLおよびパリBnFに於いて行い、その成果の一部を昨年6月敦煌学国際シンポジウム(南京)に於いて発表した。 松江は、上古中期中国語における疑問代名詞体系の統語分布に注目し、この時期の統語的曖昧性の高い文型においては、「孰」が主語、「誰」が目的語としてのみ生起する傾向があることを指摘し、さらにこのような相補的統語分布の生成過程について論じた(松江崇「上古中期禅母系疑問代詞系統中句法分布的互補現象」)。同時に、疑問代名詞目的語を含む各文型が、述語動詞の項構造の種類によってどのような統語的曖昧性が生ずるのかについて考察を加えた。
|
Research Products
(4 results)