2005 Fiscal Year Annual Research Report
移住者と受入住民の多文化的統合を視座とした共通言語教育
Project/Area Number |
16320069
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
松岡 洋子 岩手大学, 国際交流センター, 助教授 (60344628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 祐子 新潟大学, 国際センター, 助教授 (00313552)
土屋 千尋 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (00242389)
西山 教行 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教授 (30313498)
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Keywords | 共通言語 / 言語能力 / 多文化共生 / 社会統合 / 移住者と受入住民 |
Research Abstract |
海外調査の結果、以下のことが明らかになった。 1)ドイツでは2005年1月より新移民法が施行され、移住者に対するドイツ語学習を義務化し滞在権取得条件に一定のドイツ語能力を求めるなど、移住者に対して移住先の言語能力を要求する傾向が強まっている。政府はその支援策として最長2年間のドイツ語学習の機会を提供し、移住者の社会統合を促進している。 2)韓国では2005年から外国人雇用許可制による移住労働者の入国条件として韓国語能力試験を課した。外国人労働者の職場への適応のために韓国語能力が重要な要素と考えられている。 3)フランスでは移民のフランス語能力向上のために、第二言語としてのフランス語教育の実施を計画している。従来、フランスでは移民も受入住民も同等のフランス人とし、フランス語能力が十分でないのは当人の問題であり受入国が支援すべきものとは考えられてこなかったことを見ると、大きな変化と言える。ただし、移民に求められるフランス語能力はヨーロッパ言語共通枠のかなり基礎的なレベルであり、実際の社会参加のためには十分とはいえないという批判がある。 以上3カ国の調査によると、移住者の社会統合のために、受入社会は移住者に対して一定の言語能力を求める傾向が強まっていることが認められたが、求められる言語能力についてさらに調査研究が必要である。(1)2)について、異文化間教育学会第26回大会および日本言語政策学会第7回大会にて発表を行った。) 国内調査の結果、以下のことが明らかになった。 1)移住者集住地域だけでなく、分散地域においても多文化共生事業が行われるようになってきた。総務省は2006年3月に「多文化共生プラン」を発表し、自治体に対して多文化共生社会のためのモデル施策を提示し、一層の事業促進を図っている。 2)成人だけでなく、年少者、特に就学年齢の年少者に対する言語および学習支援施策・事業が増加している。文部科学省は不就学児童生徒の実態調査を開始し、その対策を講じる準備を進めている。 国内では民間だけでなく、政府、自治体でも移住者の言語支援および共生施策を講じ始めた。しかし、地域によって移住者の属性や受入社会の事情に大きな差異があり、次年度も地域別の調査研究を継続する必要がある。
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Research Products
(4 results)