2006 Fiscal Year Annual Research Report
雇用モデルの多様化に対応した労働契約法と紛争処理システムの立法論的研究
Project/Area Number |
16330013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 尚志 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 教授 (60175966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑村 裕美子 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 助手 (70376391)
富永 晃一 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 助手 (30436498)
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Keywords | 雇用モデル / 労働条件設定システム / 労働契約法 |
Research Abstract |
本研究では、雇用モデルの多様化に対応して、労働条件設定システムおよび労働契約法が諸外国においてどのように変化しつつあるのかの比較法的検討を行った。比較法的分析に踏まえて、日本において多様な雇用モデルに対応できるような労働条件規範のあり方としての労働契約法と、実体法としての労働契約法と紛争処理システムがどのように連携すべきかについて、立法論をにらんだ検討を行った。 まず、雇用モデルの多様化に対応した労働条件設定システムの展開については、労働条件設定システムと労働契約法の内容について、英米独仏を中心に各国の状況を概観し、大きな労働条件設定システムの中で労働契約法が諸外国においてどのように位置づけられているのかについても比較法的分析を行った。そこでは、伝統的な労働保護法とは区別して労働契約法を認識するドイツと、労働保護法と労働契約法を必ずしも明確に分離しない英仏などの相違も明らかとなった。そして、国家が刑事罰や行改監督によってその規範を担保しない労働契約法については、その実効性を確保する仕組みとして労働紛争解決システムが重要であることも改めて確認できた。 日本で参照されることの多いドイツとフランスについては、さらに労働契約法を考える場合に重要な手法となる法規範の柔軟化について深く検討した。とりわけ、集団的合意によって労働条件規範の柔軟化を図る場合の主体、柔軟化の対象事項、その限界等について比較法的分析を試みた。 このような比較法的分析に基づいて、日本法についても雇用モデルの多様化に対応した労働条件設定システムの見直しの必要と、その場合の労働条件規範柔軟化の担い手について総論的検討を行った。ここでは、現行の過半数代表制度の法的な問題点を析出するとともに、新たな労働条件規制の担い手をどのように構築すべきかについて試論的検討を行った。また、比較法的検討を行う過程で、日本の状況について英文論文を執筆し、諸外国の比較法研究者との議論に供した。 労働契約法に関する各論的検討では、労働契約法の内容となるべき各論点(労働契約、付随義務、労働者、採用、試用、解雇、労働条件変更等)について、紛争処理システムとの連携に留意しつつ検討を行った。
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