2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330018
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中西 正 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10198145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 英明 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60178762)
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Keywords | 倒産処理法 / 租税債権 / 事業再生 |
Research Abstract |
租税は、債務者の担税力などに基づいて課されるのであるから、倒産した債務者や倒産財団に対する課税は、当然そのような観点(例、債務超過に陥っている債務者や倒産財団に対する課税が合理的なのか否か)に基づく正当性の検討に耐えねばならない。そして、そのような検討に耐えるものであるなら、倒産による損失を負担することなく、完全に弁済されるべきである。ただし、徴税当局が、納税を猶予し、債権という形でこれを保有していると、債務者の破綻した財務状況を隠し、倒産処理手続の適時の開始を妨げる。租税債権の制限は、このような事由に基づいてなされるもののみ正当化される。 佐藤はこのような観点から、アメリカ合衆国の租税法の研究を行った。その結果、アメリカ租税法は、優先権を付与するか否かに際して、徴税当局が、納税を猶予し、債権という形でこれを保有していると、債務者の破綻した財務状況を隠し、倒産処理手続の適時の開始を妨げるという考慮から、優先権となる範囲につき時的制限を付していることが明かとなった。 さらに、現在のアメリカ合衆国での主たる議論は、債務者の担税力、つまり債務超過に陥っている債務者や倒産財団に対する課税が合理的なのか否かという観点からなされていることも明かとなった。 このようなアメリカ法の現状に照らすと、とくに個人所得税の分野でわが国の法制に解釈論上問題となり、また、立法的な手当を必要とする論点が残っていることが判明した。 中西は、ドイツ破産法の歴史研究から、ドイツ法でも、徴税当局が、納税を猶予し、債権という形でこれを保有していると、債務者の破綻した財務状況を隠し、倒産処理手続の適時の開始を妨げるという考慮から、優先権を排除していることを、明かとした。 このような各自の研究をベースとし、さらにわが国の倒産実務における具体的な問題点を知るために、実務家(大阪弁護士会所属弁護士)と、このような観点にかかわる諸問題について議論を行い、多くの知見を得た。 佐藤は、以上の研究成果を租税法研究会(平成17年5月)で発表し、引き続き『ジュリスト』誌の同研究会欄に掲載する論文を準備中である。また、上記の問題意識を新破産法下の日本の現行制度に向けた論稿である「破産手続と租税債権」・税務事例研究91号(平成18年5月刊行予定、校正作業済)を執筆した。 中西も、以上の研究成果を、「更生債権等関係」新会社更生法の基本構造と平成16年改正・ジュリスト増刊号(2005)232-238頁 三木浩一・山本和彦諞・ロースクール倒産法(2005)で発表した。
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Research Products
(3 results)