2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16330018
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中西 正 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (10198145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 英明 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (60178762)
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Keywords | 倒産処理法 / 租税債権 / 事業再生 |
Research Abstract |
平成18年度は、手続開始後の租税債権につき、研究を行った。手続開始後の租税債権については、関係する各税目の性格に応じた倒産手続における位置づけに遡った解釈論、立法論が必要であると考えられる。これまでのわが国の裁判例ないし倒産法理論においては、一般的に手続の「費用」たる性格か否かが手続開始後に発生する租税債権の扱いを決定する重要な要素とされてきたが、そこで「費用」ないし「経費」という言葉がどのような意味で用いられてきたかを慎重に検証した。その結果、「担税力あるところに課せられた租税の賦課徴収は確保されるべきである」という仮説を得た。この仮説の下では、破産手続に関係していかなる場合に、「担税力あるところに課税されているか」が重要な問題となる。破産手続においてなされる行為(破産管財人の行為等)が破産者に租税法上どのような効果をもたらすかも検討されるべきである。その先鞭をつけるものとして、破産管財人による換価処分と破産裁判所による免責許可決定が個人たる破産者にどのような租税法上の効果をもたらすかを検討した。 また、破産管財人に所得税の源泉徴収義務があるか否かという問題も検討した。破産の実務および破産法における有力説は、破産管財人はこの義務を負わない旨を主張していたが、佐藤が平成14(2002)年に公表した論文によって積極説を唱えた(佐藤英明「破産手続において支払われる賃金と所得税」税務事例研究67号23頁)ことを契機に、大阪地方裁判所平成18年10月25日判決判タ1225号172頁はこの義務を肯定した。この判決は破産実務に大きな衝撃を与えたため、その意義を法理論、実務の両面から探るため、我々はこの問題をめぐるシンポジウムを開催した(平成19年3月24日、於、大阪弁護士会館)多数の弁護士の、公認会計士・税理士、破産実務を担当している裁判官の他、租税法の研究者も出席し、有益な意見交換を行なった。
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Research Products
(3 results)