2005 Fiscal Year Annual Research Report
90年代のわが国における資金循環の構造的変化に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
16330038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 一夫 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90160746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
得津 一郎 甲南大学, EBA高等教育研究所, 教授 (80140119)
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Keywords | リレーションシップ・バンキング / クレジット・クランチ / 追い貸し / メインバンク / マッチング・データ / 不良債権 / 短観 / 設備投資 |
Research Abstract |
今年度は非金融法人企業および銀行の資産選択行動について2つの面から実証分析を行った。 1.わが国におけるメインバンクの財務状況の悪化が顧客企業の行動にどのような影響を及ぼすのか、実証分析を行った。本研究には3つの特徴がある。第1は、中小企業を対象にそのメインバンクの健全性が企業行動に与える影響を分析した点である。第2は、中小企業を対象に平成13年から15年にかけて中小企業庁が調査した企業金融環境に関する個票データを使用した点である。この調査には中小企業のメインバンクに関する情報が含まれており、メインバンクの財務状況が、融資関係を通じて顧客企業に与える効果とその他の経路を通じる効果を識別することができる。第3は、企業活動を多面的にとらえてメインバンクの財務状況との関連を調べた点である。 得られた実証結果は以下の通りである。メインバンクの不良債権比率が上昇すれば、顧客企業への貸出は抑制的になり、設備投資、雇用は減少する。また、メインバンクからの借り入れの減少を補うために流動資産が取り崩される。融資機能の低下に加えて、メインバンクから顧客企業へ提供される種々のサービスの低下を通じて、設備投資、雇用のさらなる減少が生じる。他方、将来の資金需要を手当てするために流動性の積み増しが行われる。 2.日本銀行によって調査されている『全国企業短期経済観測調査』(短観)所収の「金融機関による貸出態度」がどのような要因によって影響を受けているのか、産業別、企業規模別に分析を行った。特に、金融機関の貸出態度が金融機関の財務状況によってどのような影響を受けるのか、焦点を当てた。90年代後半には不良債権の累増によって金融機関の財務状況は大幅に悪化したが、それが企業への貸出の減少につながったのか(credit crunch)それとも銀行の業績悪化を先送りするためにさらなる貸出の増加をもたらしたのか(追い貸し)、産業間、企業規模間でどの程度差違があるのか検討を加えた。その結果、金融機関の財務状況の悪化が貸出削減につながったこと、その効果は非製造業で顕著に大きかったことがわかった。
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