2005 Fiscal Year Annual Research Report
世代間・地域間の資源配分を評価するための動学的応用一般均衡モデルの開発
Project/Area Number |
16330040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伴 金美 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30027578)
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Keywords | 応用一般均衡モデル / 動学最適化モデル / 世界モデル / 地球環境モデル / 世代交代モデル / 京都議定書 / 自由貿易協定 |
Research Abstract |
米国パデュー大学で開発が行われている国際貿易産業連関データ(GTAPデータベース)第6版と世界エネルギー機関のエネルギーデータと二酸化炭素排出データをマッチングさせ、多国間・多部門応用一般均衡モデル開発の基本となる均衡データデータセットである社会会計表を作成した。その際に、均衡データセットが長期的均衡条件を満たすようにデータを変換する方法と、初期時点を不均衡として長期動学モデルの均衡解への収斂を図る二つの方法を比較し、初期時点を均衡解とするようにデータ変換することの方が、動学的最適解を得る上で重要であることを明らかにした。これは、動学的最適解への経路が鞍点経路に限定されていること、また初期解が鞍点経路の条件を満たすことが希であることから、自然な結論と考えられる。 動学的長期均衡解の存在を仮定された均衡データセットに基づいて、多国間・多部門動学的応用一般均衡モデルのプロトタイプを開発し、東アジア地域が自由貿易協定(EAFTA : East Asia Free Trade Area)を締結した場合に、各国の経済厚生、経済成長率および産業構造に与える影響を評価し、東アジア地域の厚生が大きく高まり、それ以外の地域の経済厚生が若干低下することが明らかにされた。特に、韓国とASEANが大きな利益を受け、中国がそれに続き、日本が最も低くなることが明らかにされた。しかし、日本が自由貿易地域に参加しなければ、経済厚生が逆に低下することから、日本についてもEAFTAに参加する必要性の高いことが示された。 次に、エネルギーデータと二酸化炭素排出データを含めた均衡データセットを用いて、多国間・多部門動学的応用一般均衡モデルのプロトタイプモデルを再構築し、京都議定書を遵守したときの各国の経済厚生、経済成長率と産業構造に与える影響を評価した。分析結果によれば、二酸化炭素排出削減を各国が単独で削減することは大きな経済損失を導くことから、京都議定書で認められた二酸化炭素排出権を国際取引することで、日本やヨーロッパは排出削減費用を低下させることのできることが示された。また、京都議定書を遵守することで、日本やヨーロッパの二酸化炭素排出削減はできるものの、削減量の半分近くが米国と発展途上国に漏れることで、二酸化炭素排出削減に限界のあることが明らかにされたが、この分析結果は、2013年以降の第二約束期間において、米国や発展途上国が排出削減に参加することの必要性を強く示唆するものと言える。
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Research Products
(2 results)