2006 Fiscal Year Annual Research Report
世代間・地域間の資源配分を評価するための動学的応用一般均衡モデルの開発
Project/Area Number |
16330040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伴 金美 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (30027578)
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Keywords | 応用一般均衡モデル / 動学モデル / 世代重複モデル / 地球環境 / FTA / 計量モデル |
Research Abstract |
2001年を基準とするGTAP国際産業連関データベースと国際エネルギー機関(IEA)のエネルギーバランス表と二酸化炭素排出データをマッチクングするシステムを構築し、動学的応用一般均衡モデルを構築するために必要となる貯蓄・投資・資本を含めた均衡データセットを作成した。 GTAP国際産業連関データベースを基本とする動学的応用一般均衡モデルを用い、日本、中国、韓国とASEAN諸国のFTA協定が、協定国および非協定国の産業構造や経済厚生に与える影響を評価するための動学的応用一般均衡モデルを構築した。次いで、同モデルにより、FTA協定の経済効果を分析するとともに、貿易円滑化の促進の有無、農業の輸入関税を完全撤廃するか、一部残すかについて比較評価した。分析結果によれば、貿易円滑化の促進はFTAの効果を1割程度拡大する効果のあることが分かった。また、農業の輸入関税を一部残す不完全な自由化であってもFTAの経済効果は十分に大きいこと、輸入関税を残した国がそれに見合う厚生損失を受けることなどが明らかにされた。農業部門の自由化はFTA交渉で大きな障害となっているが、完全撤廃にこだわる必要性はないことが示された。 GTAP国際産業連関データベースから日本を単独に取り出し、家計部門を世代間に分割し、世代重複を考慮した動学的応用一般均衡モデルを構築し、無限期間存続する単一家計部門による動学的応用一般均衡モデルと比較し、有限期間の意志決定の積み重ねが地球環境に与える効果を比較評価した。シミュレーション技法を用いた分析結果によれば、有限期間の家計による意志決定は、地球規模での温暖化を防止するための費用負担を先送りする傾向にあること示された。地球環境問題は、年金や国債問題と同じく世代間の利害対立が深刻に問題であるが、将来の世代の負担を回避するようなコミットメントの必要性が明らかにされた。
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Research Products
(2 results)