2004 Fiscal Year Annual Research Report
施設介護サービスの提供主体に対する適切な規律づけに関する研究
Project/Area Number |
16330047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岸田 研作 岡山大学, 経済学部, 助教授 (30346407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
知野 哲朗 岡山大学, 経済学部, 教授 (40171938)
藤井 大児 岡山大学, 経済学部, 助教授 (50346409)
谷垣 靜子 鳥取大学, 医学部, 教授 (80263143)
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Keywords | 介護保険 / 施設 / サービスの質 / 誘因 |
Research Abstract |
16年度は、施設介護サービスの提供主体に対する適切な規律づけに関する先行研究のサーベイと、行政による監査及び特別養護老人ホームの待機者に関する調査を行った。 施設介護サービスの提供主体に対する適切な規律づけに関して、国内では全く先行研究がなかった。しかし、アメリカではナーシング・ホームの介護サービスの質やそれに影響する要因を調べた研究が数多く存在した。これらは主に老年学分野のものであるが、問題意識は研究課題と共通するところが多かった。アメリカの施設介護サービスは、本邦やヨーロッパと異なり民間主体の提供体制となっており、営利企業も数多く参入している。そのためアメリカでは、本邦やヨーロッパよりも規制が少ないだけでなく、消費者主権を守るための監査制度が発達していた。残念ながら認知症の老人に対する虐待など、アメリカでも本邦と同様の問題が起こっているが、消費者による選択権を明示的に位置づけたわが国の介護保険がアメリカから学ぶところは大きいと考えられる。各ホームの監査結果は州のホームページで一般公開されている。先行研究の多くは、監査や保険給付に関連した公的主体によるデータ又はそれとオリジナル・データを連結させたものを分析に用いている。これは、ホームの質のデータを取る場合、公的主体の権力が介在しなければ偏りの無いデータを収集することが難しいことを意味していると考えられる。本邦ではアメリカのような透明性のある監査はまだ行われていないが、グループホームの第三者評価や身体拘束について自治体レベルの調査が行われていることが判明し、来年度以降の研究の手がかりが得られた。 現在の特別養護老人ホームの監査については、岸田が所属する市民団体福祉オンブズ岡山主催の県の長寿社会対策課による行政監査に関する講演会という形式でヒアリングが実現した。現在の監査は、形式主義が非難されてきたが、都道府県間の情報交換により監査技術のノウハウが徐々にではあるが、蓄積されてきていることが分かった。しかし、抜き打ち監査は実行に費用がかかるだけでなく、監査時に必要な書類が散逸していたり、事情徴収を行うべき対象者がいないこともあるなど有効性に対する不確実性があることや人手などの費用面からも課題があることが分かった。
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